皆さんは、外国人観光客から道を聞かれたことはありませんか? ここ数年、外国人観光客は増加していますし、またマイナーなスポットに行く人も多いので、道に迷う人も同じくらい多いのだとか。今回は、そんな外国人観光客の道案内をしたことがきっかけで起こった、まさかの展開のお話です。
今から6年くらい前の話です。私は日用品を買いに新宿に出ていました。某百貨店で買い物をして、ちょっとお高めの牛タン定食を食べた後、大江戸線の新宿西口へ行くために地下通路を歩いていたところ、いきなり誰かから声を掛けられました。
「%$△&#○&%$〜」
人混みの中で、何語なのか全く聞き取れなかったのですが、気になって振り返るとアジア系の男性と女性、そして子供2人でした。
(道案内かな……面倒だな……)
内心そう思いながら近づいて話を聞くと、カタコトですが日本語でした。どうやら迷子になってしまい、途方に暮れていたようです。新宿駅の地下、確かに初心者には厳しい迷宮です。自分も上京したてのころは何度迷ったか分かりません。しかも海外で迷子になることほど心細いことはありません。不思議な正義感が芽生えた私は、案内をすることにしました。
日本語は奥さんの方が上手だったので詳しく話を聞いてみると、一家はその日の夕方に台湾から東京へやって来たそうです。そしてホテルに行く前に買い物をしようとしたところ、道に迷ってしまったようで……。
「じゃあホテルまでルートを教えてあげよう」と、宿泊先を聞いてみたところ、ホテルがあるのは新宿ではなくなんと浅草。道案内だけをして終わろうと思っていましたが、さすがに「馬喰横山で降りて歩いて浅草線に……」という複雑なルートが、日本初の外国人に即理解できるとは思えません。
(仕方ない……一緒に行ってあげるか)
そうして添乗員となった私は、電車を乗り継ぎ、無事に台湾人一家を浅草のホテルへ送ることに成功しました。別れ際、食事をごちそうしたいとの申し出がありましたが、もう遅かったので断りました。すると旦那さんが「いつかお礼をするので」と名刺を渡してきたので、私も名刺を渡してその日は帰宅。
それから3カ月後……。
会社のメールアドレス宛てに海外からメールが届きました。差出人は、新宿から浅草まで送った迷子一家の旦那さん。すっかりそのことを忘れていた私は、メールの内容を見て仰天。メールの内容は、
「世話になったので台湾の私の家に招きたい。旅費などは任せてくれ」
というものでした。それは申し訳ないと一度は断ったものの、「こんなに世話になった人に何もしないのは耐えられない」という切実な返事が来たので、そこまで言うなら……と申し出を受け入れることにしました。
それからさらに2カ月後、私は台湾の松山空港で迷子一家と再会を果たしました。まさかこんなことで海外旅行に行くことになるとは思いませんでした。
(中田ボンベ@dcp)