動画の前半に登場するのがウェストヴァージニア大学のDan Carderさん、フォルクスワーゲンのディーゼルゲートを明るみにした45歳のエンジニアです。
Carder同大代替燃料エンジン排出センター所長ら5人のチームは非営利団体ICCTに頼まれて2013年、予算5万ドル(約600万円)でフォルクスワーゲンのディーゼル車の排ガス調査を行いました。LAからシアトルまで運転して調べたんですが、あまりにも公式発表と違うため、最初は調査ミスの方を疑ったのだといいます。
結果的に米国の排ガス試験のときだけ排ガス量を下げるソフトウェアを同社が不正に搭載していたことがわかり、1年半後の今ごろになって米環境保護庁(EPA)とカリフォルニア州大気資源局(CARB)が公式発表に踏みきってフォルクスワーゲン株は大暴落、CEOは全面謝罪で辞任という大スキャンダルとなっています。WV大がVWをぶっすり。
不正ソフト搭載車両は世界で1100万台。EPAが警告を出した車種は以下のとおりです。
Jetta (MY 2009 – 2015)
Jetta Sportwagen (MY 2009-2014)
Beetle (MY 2012 – 2015)
Beetle Convertible (MY 2012-2015)
Audi A3 (MY 2010 – 2015)
Golf (MY 2010 – 2015)
Golf Sportwagen (MY 2015)
Passat (MY 2012-2015)
source:
EPA
気になるEPAからの制裁金ですが、これは下手すると180億ドル(2兆円超)になります。どこぞの国家予算規模の罰金なのでさぞかし対応が大変なんだろうなーって思っちゃいますけど、これって実はソフトを直せば済む話みたいですよ? 当のCarder所長自身、NBCにこう語っています。
燃料を吹き付ける戦略を変えるだけで済む問題です。低燃を犠牲にすれば、システムがもっとアクティブに稼働し、排出レベルは下がります。
つまり燃費はだいぶ上がっちゃうんでドライバーの懐は減るけど、ガスも減るってわけですね。
ちなみにアメリカを揺るがした自動車業界の大スキャンダルと言えばトヨタとGMですが、そっちの制裁金と比べた記事がハーバード・ビジネス・レビューに掲載されていました。書いたのは「トヨタ・ウェイ」の著書で知られるジェフリー・ライカー氏。
トヨタは、フロアマットが外れてブレーキに引っかかってサンディエゴの1家4人が亡くなった事件が大スキャンダルになったんですが、あれはレクサスディーラーがSUV用のデカい全天候型フロアマットを代車に無理に敷いて外れちゃったのが原因でした。でもLAタイムズなどに急加速、急加速と騒がれて、やらなくていいリコールまでやる羽目に。また、ペダルがベトつく騒動も米国内で20台未満ぽっきりで事故報告もなかったのに大量リコールさせられ、連日連夜トヨタ終わったと叩かれましたよね。あのとき米司法省に払った和解金は結局、12億ドルでした。
一方、国産ゼネラル・モーターズ。ここはキーがちょっとした弾みでACC位置に動いてエンジン停止となり、ブレーキもアクセルもエアバッグも作動しなくなるシボレー・コバルトの不具合で、死者150人重傷700人という大変な被害を出しました。しかも問題があることを2001年の開発段階で知っておきながら、2013年までそれをひた隠しにしていました。カナダCBC放送の報道番組では、技術部門トップが「地獄のスイッチ」と呼んでいる社内メモ、リコールするより遺族の訴訟費用が経済的に安いという悪魔の計算を行った社内文書も紹介されています。これだけのことをして米司法省に払った和解金は9億ドル。
150人死んだGMが9億ドルで、ひとりも死んでないフォルクスワーゲンが18億ドル(+米司法省との和解金、米国以外の国に支払うモロモロ。ああ、目眩が…)っていうのは吊り合わない気もするんですが、これが不正の代償というものなんでしょね。
source: HBR
(satomi)