米軍の無人戦闘機ドローンの実態に迫る映画「ドローン・オブ・ウォー」(アンドリュー・ニコル監督)が1日に公開された。映画は、ドローンとその操縦士の日常にスポットを当て、クリック一つでミサイルを発射する男の姿を通して対テロ戦争の知られざる真実を映し出す。「ガタカ」(1998年)のニコル監督とイーサン・ホークさんが再びタッグを組み、まるでゲームのように進んでいく現代の戦争のありさまを、任務の中で苦しむ主人公の姿や家族との関係を交えつつリアルに描いている。
米国空軍のトミー・イーガン少佐(ホークさん)は軍事パイロットでありながら、ラスベガスの基地にあるコンテナ内でドローンを遠隔操作し、1万キロ余りも離れた異国でのミッションを遂行している。トミーは任務を終えると美しい妻・モリー(ジャニュアリー・ジョーンズ)と幼い子供たちが待つマイホームへ帰る日々を送っていたが、ゲームのようにミサイルを発射するなど現実感が欠落した任務に神経をすり減らしていき……という展開。
話題を集めているドローンを扱った今作は、テロリストを一掃するために導入された軍事用ドローンの運用状況を実話をベースに描いている。つまり、スクリーンに映し出されている内容は決して空想物語ではなく、事実に即した科学であり、現実だと思い知らされる。戦争映画ではあるが戦闘シーンやアクション、兵士たちのサバイバル描写すらない。むしろストーリーは安全な部屋の中で画面に向かって発射ボタンを押す様子と、家族との日常を行き来する男の姿を中心に淡々と進んでいく。この展開からは、不条理さや無力さを突きつけられる。自らの命を危険にさらさず、家族にとっても安否を気づかわなくてもいいドローンの遠隔操作による攻撃は、ある種の理想的な戦い方といえなくもない。しかし、そこには現実感を伴わない行為に苦悩する操縦士の心情が隠されており、これまでとは違った戦場の狂気が存在し、対テロ戦争の矛盾をはじめ現代の戦争の異常さに気付かされる。TOHOシネマズ六本木(東京都港区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
<プロフィル>
えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。