家電の流通を支配しているのは量販店だ。業界のリーディングカンパニーは連結売上高1兆8939億円を超えるヤマダ電機(群馬県高崎市)。2000年代前半は快進撃を続けたが、昨今はネット通販との低価格競争に追われており、一時期ほどの拡大モードはない。
リアル店舗で客が商品を購入する決め手は、価格よりも顧客サービス、さらに店員の豊富な知識、圧倒的な品揃え――そんな時代になっている。
消費者に支持される家電量販店はいったいどのチェーンなのか。Jタウンネットは、2015年7月24日から9月28日までの67日間、「家電量販店といえばどこ?」というテーマでアンケートを実施し、全国の587人の読者に投票いただいた。
全国区で1位に輝いたのは意外にも...集まった票は2つの方法で集計・分析した。1つ目は日本全体での「合計票数」、2つ目は得票率1位を獲得した「都道府県の数」での比較だ。
まずは全体での結果から。
選択肢に挙げた8チェーンのうち、全都道府県に出店しているのはヤマダ電機のみ。今回の投票でも1位になっておかしくないところ、得票率16.7%で2位に甘んじた。
1位は得票率26.4%のヨドバシカメラ(東京都新宿区)だ。ターミナル駅前に巨艦店を出店する「レールサイド戦略」を採っているため22店舗しかないが、ネット通販でAmazonを猛追しており、全国にファンは多い。
3位は現金値引き主義が売りのケーズデンキ(茨城県水戸市)で得票率15.7%。「頑張らない経営」をモットーにし、都会の真ん中には出店しない方針を採っている。一方でロードサイドへの出店意欲は旺盛だ。
4位は得票率12.4%のビックカメラ(東京都豊島区)。ヨドバシカメラと同じく都心中心主義だったが、2012年にコジマを子会社し、郊外を新たなマーケットとしている。
ここまではすべて東日本勢だが、5位にランクインしたのは上新電機(大阪市浪速区)。「北関東YKK」(ヤマダ電機、コジマ、カトーデンキ販売(現ケーズホールディングス)およびカメラ系ディスカウントの攻勢に耐えて生き残った、安売り家電店の老舗だ。
得票率11.4%で6位になったエディオンは、中国地方発祥のデオデオと東海地方が地盤のエイデンが2002年に共同で設立した。大阪のミドリ電化や東京の石丸電気、北海道・北陸のサンキューも傘下に収めている。
以下、ベスト電器(福岡市博多区)が得票率2.2%で7位、ノジマ(横浜市西区)は得票率2.0%で8位と続く。両社はインショップスタイルでの出店が多い。
都道府県別で最も「議席」数を得たのはヤマダ次は、各店が得票率1位を獲得した都道府県の数と、その地域的な傾向を見てみよう。
1位に輝いたのはヤマダ電機で、10県で得票率トップに輝いた。もっとも太平洋ベルトではあまり支持されず、九州地方の強さが目立った。
ヤマダ電機の創業者は宮崎出身で、九州進出は宿願だった。1992年に「テックランド宮崎店」をオープンさせて以来、当時九州の覇者だったベスト電器に対し、「ベストさんより安くします」「80円セール」などを仕掛けて勢力を拡大する。戦国時代さながらの販売血戦が繰り広げられるも、弱体化したベスト電器は2012年、ヤマダ電機に買収されてしまった。
2位のケーズデンキは、2007年に東北地方ナンバーワンだったデンコードーを完全子会社化し、その営業基盤を守っている。同地方はヤマダ電機とケーズデンキがしのぎを削るが、先に販売網を構築した強みは今も大きい。
3位はエディオン。愛知と中国地方、愛媛の7県で得票率トップだった。同社の源流であるデオデオとエイデンは共に丁寧なアフターサービスが売りで、「町の電気屋さん」として地元から愛された。エディオンの地盤に対する他社の攻勢は止まないが、その地位は揺るいでいない。
全国区で1位だったヨドバシカメラは4番手にとどまった。大阪のマルチメディア梅田や福岡のマルチメディア博多は日本有数の売場面積を誇っているが、西日本の府県で1位を奪取するほどの勢いはまだない。
5位の上新電機は、2003年から阪神タイガースのスポンサー企業となっている。そのPR効果が手伝ってか、和歌山を除く関西2府3県で支持率トップだった。
カメラ系の西日本攻勢は続く以下の横向き積み上げ棒グラフは、12都道府県の投票傾向をまとめたもの。
ヨドバシカメラは北海道、栃木、埼玉、千葉、大阪、福岡の6道府県で各1店舗しか出店していないのに、それらの地域で確実にシェアを奪っている。愛知と広島は未出店だが、今年11月、松坂屋本店南館に名古屋1号店がオープンする予定だ。
都道府県別では栃木しか「議席」を獲得できなかったビックカメラ。しかし、埼玉、千葉、東京ではヤマダ電機以上に支持されている。今のところ西日本ではイマイチだが、2016年春、JR広島駅南口に出店することが決まっている。