今回のラグビーワールドカップで一躍、全国区になったのが日本代表の副キャプテン・五郎丸歩(ごろうまる・あゆむ)。
端正な顔立ちに正確無比なプレースキック。キック前の両手を組んだ独特のルーティンも話題となったが、この「五郎丸」という、なんともレアな名字も注目に拍車をかけているのは間違いない。
なんでも昨年、ラグビー・トップリーグの試合を観戦された天皇、皇后両陛下も、同席した当時の日本ラグビー協会会長の森喜朗氏に「それ(五郎丸)は本名ですか?」と尋ねるほど関心を持たれたとか。
ところが、『全国名字大辞典』の著者・森岡浩氏によると、この「五郎丸」という名字、実はそこまで珍しい名字ではないのだという。
「日本の名字の総数は十数万といわれていますが、ランク1位の佐藤を筆頭に5千位以内であれば普通の名字、1万位以下(約200世帯弱)でようやく珍しい名字といえます。それでいうと『五郎丸』は、8600位あたりで全国に250世帯前後、約1千人いると思われるので、さほど珍しい名字ではないんです」
マジですか! 人生で五郎丸さんに会ったことなんてないぞ? ちなみに、森岡氏によれば“普通”とされる5千位前後の名字は「甲賀(こうが)」「大路(おおじ)」「北風(きたかぜ)」、“珍しい”とされる1万位前後の名字は「上運天(かみうんてん)」「日下田(ひげた)」「小美野(おみの)」なのだとか。
それにしても五郎丸。名字なのか名前なのか紛らわしい。
「名字の『丸』は、九州北部では新田(しんでん)という意味で、五郎丸は福岡を中心に北九州から広島県あたりまでに多く存在します。他にも太郎丸、次郎丸、二郎丸、三郎丸、四郎丸、六郎丸、七郎丸、九郎丸が実在しますが、なぜか一番多いのが五郎丸なんです。残念ながら、八郎丸と十郎丸は確認できていません」(森岡氏)
「○○丸」とつく名字では他に、田中丸、船津丸、源五郎丸などの名字がいるとのこと。そーいえば昔、豊丸ってAV女優がいたけど、元気してるかなー。彼女も田んぼが関係してたのかなー…。
ところで森岡先生、日本一珍しい名字ってなんですか?
「1世帯ひとりの名字が最下位となりますが、どの名字がそうかはわかりません。というのも毎日、多くの方が亡くなり、生まれてくるからです。ちなみに、ネットに書かれている“珍しい名”の大半は実在しないのでご注意を」
今回、本誌は五郎丸さんに話を聞くことはできなかったが、代わりに貝通丸(かいつうまる)さん(38歳・男性)とのコンタクトに成功。話を聞いた。
「両親は佐賀県出身ですが、日本に何世帯あるとかはわかりません。小学生の時のあだ名は『カイジュウ』でした。得したこと? 合コンとか初対面の人に興味を持ってもらえることですかね。自己紹介する時、いいツカミにはなります(笑)。
逆に、学生時代に担任の先生が読めなかったり、既製のはんこは絶対売ってなかったり不便なことも多いです。病院で呼ばれると一瞬、『おまえ、フザケてんの?』みたいな空気になるから気まずいですね(苦笑)。ちなみに、『ファミレスの順番待ちリストに名前を書く時、店員が読めないから必ず偽名を使う』とかは、珍しい名字あるあるです」(貝通丸氏)
珍しい名字の人って、苦労も多いんですね。普通の名字でよかったかもですよ、全国約200万人の佐藤さん!
(取材・文/水野光博)