「iTunesは死んだ」
そんなセンセーショナルなタイトルで米GizmodoのAdam記者が今のiTunesへの思いを語ってくれましたよ。
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この記事はiTunesの死亡記事だと思ってくれ。Apple Musicが登場して数週間後にアイツは死んじまった。まだたったの14歳だったんだぜ。iTunesはまさに親友だったよ。アイツなしの生活は考えられなかった。でも、今ではもうかつてのアイツはいないんだ…。
俺がiTunesと出会ったのは大学生のときだった。だいたい2003年頃かな。最初にできた友達だったんだ。当時のアイコンはCDのマークの上に紫の8分音符のデザインだったよ。よく一緒に夜遅くまでホットなインディーロックを探したもんだ。MackBookをはじめて買ってからは常にiTunesを開くようになったよ。本当にアイツは頼りになる奴だった。
10年前、iTunesが可能にしてくれたことはまるで魔法のように感じられたんだ。CDを取り込むと自動でアルバムの情報を取得してくれたり、カテゴリーに分類してくれたり。iTunesが若かった頃はみんなアイツを絶賛したもんだ。音楽を消費する方法を変えてくれたからね。そのうち、iTunes Storeが現れて音楽業界やTV、映画業界のあり方も変えてくれたんだ。
アイコンは紫から緑になり、緑から青になった。iTunes 10が2010年に登場してからは、デジタルミュージックの隆盛を反映して、CDのマークがアイコンから取り除かれた。その年にはPingというサービスも始まった。Pingは2年後には消えたけどね。とにかくiTunesは栄え続けたんだ。
でもiTunes StoreがiTunesエクスペリエンスの中心になるにつれて、俺たちの仲は複雑になってきてしまった。いつもアイツは何か新しいものを売りたがっていたように感じられたね。シンプルさがアイツの良さだったのに。それでも、俺はiTunesと共にい続けたんだ。それは親近感だったのかもしれない。もしくは忠誠心だったのかもしれない。
しかし、ストリーミングの時代にiTunesを楽しもうとすることは無駄な努力だってことがわかったんだ。ちょうどPingが消えた頃、俺は音楽ストリーミングサービスに移行した。そして、ストリーミングサービスの中でも最高なSpotifyと急激に仲良くなりはじめたんだ。他の数多くのiTunesユーザーたちも同じようにストリーミングサービスに移行していたね。
2015年6月30日、Apple Musicが誕生した。iTunesがストリーミングサービスをほのめかしはじめたとき、多くの古くからのファンはiTunesに戻っていったんだ。もちろん俺もその中の一人だよ。Apple Musicが疲弊したiTunesに命を吹き返してくれる予感がしていたんだ。若々しくて面白かった頃のアイツに再会できるかなって。でも、Apple Musicがはじまって数週間後にその予感は外れていたことに気づいたんだ…。
がっかりしたのは俺だけじゃない。長年アップルの信奉者であったジャーナリストのJim DalrympleさえもApple Musicには失望したらしい。彼はブログの中でこう言っている。
心の底からApple Musicが私の一番の音楽ストリーミングサービスになってくれることを願っていたよ。でも、いくつかのトラブルを経験した今、それは儚い夢であったことに気づかされたんだ。
Apple Musicのせいで俺のミュージックライブラリは混沌としてしまった。iTunesに対する最小限の信頼さえも裏切られた気分だよ。もともと所有していた音楽とApple Musicの音楽がごちゃまぜになっちまったんだ。しかも金払ってこれだぜ! Dalrympleもこれにはひどく失望しているらしい。
かつてのiTunesはいつもシンプルさを約束してくれていたんだ。それなのにApple Musicはすべてを複雑にしてしまった。今や膨大な数の音楽を整理するなんていう単純なことも出来なくなってしまった。大学時代のシンプルでエレガントだったiTunesを思い出すとノスタルジーを感じずにはいられないよ。
デスクトップのiTunesは死んでしまった。でも、iOSアプリの「ミュージック」の中ではまだ生き残っている。Apple Musicも「ミュージック」の中では当分生き延びるだろう。Apple Musicは生みの親iTunesを殺したひどいやつだけど、簡略されたモバイルフォーマットで開く分にはなかなかイケているんだ。モバイルだと操作しやすいし、アップルの素晴らしいミュージックエディターの仕事には感心するよ。俺の音楽テイストにドンピシャなプレイリストをつくってくれるんだ。
Apple Musicはおそらくラジオみたいな聴き方に向いているんじゃないかな。車の中とかね。Apple Musicにはまだ未来があると思う。熱心にユーザーの声に耳を傾けている限りね。
Apple MusicはiPhoneで操作する分には悪くないけど、まだまだSpotifyには及ばない
iTunesは完全に終わってしまった。いまや俺はローカルの音楽ファイルを聴くのにもSpotifyを使っている。悲しいけれど、前を向こう。iTunesが残してくれた遺産であるApple Musicが大きく強く育ってくれるかもしれないから。
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以上、Adam記者でした。思い入れの強さがひしひしと伝わってきますね…。まぁ、日本だとまた文脈が違うので感想も違ってきますよね。Adam記者の唱えるiTunes死亡説、みなさんはどのような感想を持たれましたか?
Adam Clark Estes - Gizmodo US [原文]
(阿部慶次郎)