プロ野球ペナントレースは佳境に入り、セ・リーグは東京ヤクルトスワローズと読売ジャイアンツ(巨人)が史上稀に見るデッドヒートを繰り広げてきた。首位・ヤクルトと2位・巨人が2ゲーム差で迎えた9月26日、27日の東京ドームでの2連戦は、巨人が初戦を制したものの、2戦目はヤクルトが勝ち、マジック3が点灯。28日にはついにマジックは1となり、ヤクルトの14年ぶりの優勝が間近となってきた。
リーグ優勝を果たしても、現行制度ではクライマックスシリーズ(以下、CS)を勝ち抜かないと、日本シリーズへは進出できない。ただ、セ・リーグでCSが始まった07年から昨年までの過去8年で、ペナントレース2位以下のチームがCSを突破したのは、わずか2回だけ。ヤクルトが混戦を制すれば、その勢いのまま日本シリーズへ進出する可能性が高い。
一方のパ・リーグは、福岡ソフトバンクホークスが早々と2年連続優勝を決め、CSへ備えている。圧倒的な戦力を誇るチームだけに、順当に進めば今年の日本シリーズはヤクルト対ソフトバンクという組み合わせになる。
これに頭を悩ませているのが、テレビ局だ。関係者が話す。
「そのカードだと、関東地区での視聴率が期待できないのです。昨年の阪神対ソフトバンクは第3戦8.3%(ビデオリサーチ調べ/関東地区 以下同)、第4戦8.4%と1ケタを記録してしまった。日本一の決定した第5戦ですら10.3%。関西地区だけでなく、ある程度全国区の人気があると思われていた阪神ですら、この数字でした。ヤクルトは東京のチームですが、関東で数字が取れるとは思えない。実際、8月25日の巨人戦(フジテレビ系)では、ゴールデン帯で3.7%を叩き出してしまった。いくら日本シリーズとはいえ、2ケタに乗るのかさえ不安視されています」
前回ヤクルトが日本シリーズに進出した2001年は近鉄と対戦し、初戦は17.7%、日本一の決まった第5戦は19%を記録。日本シリーズであれば20%超えが求められた時代とはいえ、最低限の数字はクリアしている。
「01年からナイター中継の数字が20%台に届かなくなる試合が増えましたからね。当時と今を比べれば、マイナス10%で計算するのが妥当だと思います。そうなると、今年のシリーズは1ケタになってしまいます。今年の日本シリーズは、中継なしの試合が出る可能性もあると思いますよ」
●カギはフジテレビ?
2010年、中日対ロッテの日本シリーズでは、1、2、5戦の地上波中継がないという全国ネット確立以降、初の事態となった。千葉に本拠地を持つロッテが出場していたが、関東地区での中継もなかったのだ。ヤクルト対パ・リーグCS勝者となれば、今年は5年ぶりの中継なしの試合が出てくる可能性があるというわけだ。
「カギを握るのはフジテレビでしょうね。ヤクルトの株主でもあり、ヤクルト主催ゲームの中継権を持つフジがどういう決断を下すか。今年はセ・リーグが3、4、5戦(火曜、水曜、木曜)の主催試合です。10月下旬は、新レギュラー番組の開始2回目前後なので、本当は日本シリーズで視聴習慣を潰したくないところでもある。しかし、今のフジはレギュラーが散々な結果なので、視聴率の取れていない火曜、水曜は日本シリーズを放送するかもしれません。木曜は数少ない2ケタに乗る曜日なので、避けるのではないでしょうか。そのとき、テレビ朝日などの他局がどう動くか」
かつては、デーゲームにもかかわらず、視聴率30%超えもあったプロ野球の日本シリーズ。時代は流れ、いつの間にか「どの局が引き取るか」という荷物を押し付け合うかのような様相を呈している。
(文=編集部)