有川浩さんによる人気小説「図書館戦争」シリーズ(角川文庫)の映画化第2弾「図書館戦争 THE LAST MISSION」(佐藤信介監督)の10日公開に先立ち、スペシャルドラマ「図書館戦争 BOOK OF MEMORIES」が、5日にTBS系で放送される。ドラマと映画の両方でメガホンをとった佐藤監督は、両者の関係を、「コインの裏表」に例え、「合わせ見るとすごく面白いんじゃないかな」と自信を見せる。佐藤監督がドラマについて語った。
◇アクション中心の映画とキャラクター重視のドラマ
「図書館戦争」シリーズは、近未来の日本を舞台に、国家による検閲に対抗し「本を読む自由」を守る、「関東図書隊」隊員たちの活躍を描いている。映画の前作「図書館戦争 LIBRARY WARS」(2013年)では、図書隊に憧れ入隊した笠原郁(榮倉奈々さん)が、上官・堂上篤(岡田准一さん)のシゴキに耐え成長する姿と、誘拐された仁科巌基地司令(石坂浩二さん)を奪還する小田原の攻防戦を描いていた。今回のSPドラマ「BOOK OF MEMORIES」は、その半年後という設定で、図書隊と「メディア良化隊」の戦闘シーンといったアクション中心で展開していく新作映画「THE LAST MSSION」に対して、佐藤監督いわく「アクションはあまりなく、キャラクターにどんどん寄っていく」内容になっているという。
焦点を当てたのは、笠原の同期、手塚光(福士蒼汰さん)と、堂上のバディ、小牧幹久(田中圭さん)だ。手塚は、業務部所属の柴崎麻子(栗山千明さん)が、朝比奈修二(中村蒼さん)と名乗る学芸員と頻繁に会うようになり、心穏やかでない。一方、小牧は、幼なじみで聴覚に障害を持つ中澤毬江(土屋太鳳さん)に薦めた本が「不適切」とされ、「メディア良化隊」に身柄を拘束されてしまう。この2組の“カップル”を中心に物語が進む中、「いろんな人が活躍し、キャラクターの宇宙ができているような気がする」と佐藤監督は解説する。
新作映画とドラマの撮影は同時に進められた。「入れ子状態」で撮ることに、当初、周囲からは「バラバラにならないか」と危惧する声も上がったそうだが、そこは「GANTZ」とその続編「GANTZ PERFECT ANSWER」(ともに11年)を同時に撮った佐藤監督のことだ。そのときの「なるべく二つのテイストを分けようと試行錯誤しながら撮影した経験」が今回は生き、「イケる」と思いながら撮影を進めていったという。ドラマパートを撮る際には、「『図書館戦争』のもう一つの側面、日常の柔らかい雰囲気を出したいと思いながら」演出したという。
◇メディアを超えて楽しむ
かくして完成した映画とドラマ。佐藤監督は、「どちらを先に見てもいい」と話す。もちろん、映画前作、今回のドラマ、今回の映画の順で見るのが無難だが、その流れで見た場合は、ドラマで張った伏線が映画で回収されていくことを楽しめるし、今回の映画を見てから録画しておいたドラマを見ても、「こんなことがあったから、こうなっているんだという発見もあるでしょうし。それもすごく面白いと思います」とアピールする。
なんでも佐藤監督の中では、「三つの図書館戦争」が存在しているといい、「『THE LAST MSSION』は、『図書館戦争』の中の一つの“極”で、もう一つの極にふかっとした感じの『BOOK OF MEMORIES』があり、さらに映画前作の世界がある。どれもいいバランスで浮かんでいる」とシリーズの世界観を表現する。
そして、「(映画とテレビの)メディアを超えて楽しんでもらいたいですね。ドラマと映画、どちらも同じスタッフ、同じキャスト、同じ機材で撮っているので、最終的にはどちらがドラマでどちらが映画かという区別はあまりないと思います。ドラマとしては、すごくリッチな仕上がりだと思います」と胸を張った。ドラマ「BOOK OF MEMORIES」は、5日午後9時からTBS系で放送。
<プロフィル>
1970年生まれ、広島県出身。武蔵野美術大学在学中に脚本・監督を務めた16ミリ短編映画「寮内厳粛」が「ぴあフィルムフェスティバル94」でグランプリ受賞。2001年「LOVE SONG」で監督メジャーデビュー。「修羅雪姫」(01年)、「COSMIC RESCUE The Moonlight Generations」(03年)、「砂時計」(08年)、「GANTZ」(10年)、「GANTZ: PERFECT ANSWER」(11年)、「図書館戦争 LIBRARY WARS」(13年)、「万能鑑定士Q モナ・リザの瞳」(14年)などを監督。脚本家としても活躍しており、手掛けた作品に「春の雪」(05年)、「県庁の星」(06年)などがある。16年公開の「デスノート2016」(仮)の監督を務める。
(インタビュー・文・撮影/りんたいこ)