データは金鉱であり地雷である | TechCrunch Japan

データサイエンスと医療関連分野で仕事を始めてから5年になる。私はウォートン大学で生物学とマーケティングを学び、膵臓がんの研究をした。そして今私が言いたいのは、テクノロジーとその利用環境が驚異的に進んだにもかかわらず、医療分野はおよそついて行くことすらできていないことだ。

今やどの会社もテラバイト単位の〈データ〉を扱っていると言っている。しかし、スタートアップからFortune 500企業まで、ベイズ統計を導入してユーザーレベルのデータの力を活用している会社を見たことがない。彼らは統計あるいはコンピューター科学の教育を受けた人たちであり、会社の収益を高めるために給料をもらっている人たちなので、そうするためのインセンティブは膨大だ。

これはベイズ理論が著しく複雑であるとか新しいという話ではない ― 名前はややこしそうに聞こえるかもしれないが。ベイズは1761年に死んだ。もしわれわれがテラバイトのユーザーレベル 〈データ〉を持っているなら、なぜプッシュ通知の一つ一つが私の魂を射止めないのだろうか?なぜ、どのウェアラブルにも一日中座っていると心臓病になる時期がわかる健康管理システムが付いてこないのだろうか?

それは、データの収集はほんの第一段階にすぎないからだ。データマイニング[採掘]とは実に適切な用語だ:膨大な量のテクノロジーと人手を注ぎ込み、エンジンをぶん回し、深く堀り進んだ挙句たぶん何一つ見つからない。100%の人々がある行動を示すことを知り、局所的に最適化しようとした結果、そもそもそんな機能を持つべきでないことに気付く。

例えば、脱水症状問題の答えは1時間毎に水を飲むためのプッシュ通知を受けることだろうか?それとも子供の頃に学校が健康的習慣を促進すべきなのだろうか。テクノロジーは毎日何十億ドルも広告に費し、私に炭酸飲料やビタミン水を飲まそうとする ― 実際に体が必要とするものの代わりに。こうした問題は、いずれも〈データ〉の問題ではない。

今データにできること、それは人々の意識を高めることだ。私は10歩しか歩かずドスンと座ってNetflixを見るだけの日があることなど知らなかった。しかし今は、 FitbitStrava(ランニング追跡アプリ)とiOS 8 HealthKitを使って運動を記録し元に戻すべく戦っている。

同じことはVessylにも言える。テクノロジーを駆使したクールなアクセサリーで、1日に飲んだ水の量を追跡する。私がTechCrunch Bostonのピッチオフでしゃべった時、Neumitraという会社は、ストレスレベルをリアルタイムで追跡するものすごいリストバンドを作っていた。

コストはさておき、われわれは臓器を3Dプリント(データ量は多くない)できる時点より手前にいるが、自分の健康を管理しない言い訳ができる時点は過ぎている。テクノロジーの進歩の速さ(Microsoft Word)と対応する医療の進歩(電子カルテ)から判断する限り、正確なバイオマーカー(生体指標)が出来るよりずっと前に、われわれはその特異点を越えているだろうから、賭けをするならそのつもりで。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook