編集部記:Florian Graillotは、Crunch Networkのコントリビューターである。Florian GraillotはAXA Strategic VenturesのVC投資家である。
決済取引を行うには、まず送金者が送付しようとしている資金を所有しているかを確認する必要があり、次に取引が重複して行われないように保証しなければならない。
ブロックチェーンでは、ネットワークを介して行われる取引の全ての情報をブロックに保存している。そのため、取引される資産と所有権の両方を確認することができる。
取引を重複して行わないために、このテクノロジーは取引のプロセスの合意を得るために複数のノードをリクエストしている。この確認を人為的に達成するのは困難だ。マイナーはコンピューターでの演算処理を利用し、複雑な暗号課題(Proof of Work)を解いている。課題を解読する度に、ブロックがチェーンに追加され、それによりブロックに含まれる取引が承認される。新しくブロックを追加してアップデートされたチェーンは、他のノードと共有される新しい参照元となる。このプロセスは暗号技術を利用し、取引の重複を防ぐ。
新しく発行したブロックは前のブロックと接続しているため、以前の取引に戻ることはほぼ不可能となる。このテクノロジーは取引を認証する過程の中で発生する全ての問題を解決するため、取引を行うのにサードパーティーに依存する必要がなくなる。ネットワークで既存の中央機関を置き換えることができるのだ。
現在、ブロックチェーンを介した資産の取引はほぼリアルタイムで行われる。台帳に新しいブロックを追加するには、およそ10分かかる。時間の経過とコンピューター処理が増大するほど、解かなければならない数学課題の複雑性も増す。一つの取引を処理するごとにマイナーは0.0001ビットコイン(BTC)を得ていて、取引手数料はこれまでとは比較にならないほど低くなっている。これは市場を塗り替えるだろう。
ご存知のようにブロックチェーンを活用した最初の用途はビットコインで、それが最も有名なものだ。ビットコインのファウンダーは決済取引を行うため、そして仮想通貨が抱えていた多くの問題を解決するためにこの技術を開発した。中央銀行が貨幣を発行し、銀行が資産の取引を承認するのではなく、ビットコインはブロックチェーンを活用する。例えばAbraは、このテクノロジーを活用し国際間送金を簡単にする。彼らはビットコインで海外送金市場を刷新しようとしているのだ。
このテクノロジーが広く普及して成功を得るためには、テクノロジーの安定性が重要な課題となる。
決済に関連する分野を超え、ブロックチェーンを活用する他の方法を模索している企業もある。スタートアップ各社はその技術で他の業界も刷新しようと取り組んでいる。取引にサードパーティーが関連する場合、それをブロックチェーンに置き換えることができるからだ。
Overstockは、ブロックチェーンに基づいたプライベートエクイティの取引プラットフォーム「tØ」を開発した。同じ分野で数ヶ月前、NASDAQがChainとパートナーシップを締結したことを発表している。彼らは、ブロックチェーンで株式取引のあり方を刷新しようと取り組んでいる。
さらに統括的な部分で、Goldman SachsやBarclaysといった金融機関はスタートアップであるR3と組み、ブロックチェーンを使用した新しい市場のフレームワークを構築しようとしている。
いくつかのスタートアップはさらに先に進み、ブロックチェーンを物理的な資産の取引に活用しようと取り組んでいる。例えばBitproofやBlocknotaryは、ブロックチェーンに契約内容を記録することで不動産契約のあり方を刷新しようとしている。公証人の前で家の売却を行うのではなく、契約内容を公的な帳簿に保存するだけで済むようになる。
Coluは、ブロックチェーンを活用して資産をデジタルトークンで管理しようとしている。このトークンはオンラインのサービスや物理的な資産を利用する時に使用するものだ。
ブロックチェーンを知的財産にも適応することもできる。例えば、Verisartはこの分権テクノロジーをアート作品の認証に使用している。彼らは、アート作品の著作権を暗号化し、ブロックチェーンに記録する。ProofOfExistenceも同様に、作成したファイルを公的な台帳に記録し、トラックして管理している。
さらに、ブロックチェーンは個人を認証するのにも使用できる。ShoCardは本人確認に関連する個人情報を暗号化して保存する。インターネット上のスマートな契約に利用することが可能となる。契約条件が合意に達した際には、契約は権限が分散したインフラで処理することができる。IBMは現在、このアプリケーションの開発に取り組んでいる。また、Samsung ADEPTともパートナーシップを締結したことを発表し、ブロックチェーンをモノのインターネットの分野にも適応する可能性を示している。
しかしそれらを実現するには、ブロックチェーンのテクノロジーで修正しなければならない箇所がある。まず、ネットワークの容量だ。先に説明したように、ブロックは10分毎に台帳に追加される。ブロックのサイズの限度(1MB)により、ネットワークは毎秒7件(tps)の取引しか処理することがてきない。これは、VISAが処理できる56,000tpsに到底及ばない。
数週間前、ブロックサイズに関連する議論が起き、ブロックチェーンのフォークが誕生した。何名かのマイナーがブロックサイズを8MBに拡大したのだ。ブロックのサイズは2年ごとに倍になる予定だ。この議論を解決するために、Bitcoin XTがネットワークの容量の75%に達した場合、ネットワークは新しいブロックサイズへと移行する。さらに包括的な議論では、大量の取引を少ない取引手数料で行うようなブロックチェーンか、あるいは少ない取引数を高い手数料の割合で行うべきかという議論もある。
「1975年のパーソナル・コンピューター、1993年のインターネット、そして2014年のビットコイン」
セキュリティーも脅威だ。いくつかのビットコインの取引プラットフォームがハックされ、閉鎖したことに伴い、大量のビットコインが消滅した。これは、今後ブロックチェーンで取引される資産にも起きる可能性がある。
これは、分権したネットワークに管理の必要性という課題を突きつける。このテクノロジーが広く普及して成功を得るためには、テクノロジーの安定性が重要な課題となる。
ビットコインが普及し、ずっとあるのなら、それを支えるブロックチェーンという技術は、それの最も興味深く、革新をもたらす部分であると言える。歴史上初めて、このテクノロジーは中央機関を代替することができるかもしれない。分権したネットワークがサードパーティに取って代わることができるのなら、取引を簡単に、かつコストも抑えることができ、今後、多岐にわたる分野で応用することができるだろう。スタートアップはこのテクノロジーを加速させている。また、著名なVCであるMarc Andreessenでさえ、ブロックチェーンを以前のテクノロジー革命と重ねあわせている。「1975年のパーソナル・コンピューター、1993年のインターネット、そして2014年のビットコイン」。
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