【北京時事】中国の女性薬学者・屠※※(※=口ヘンに幼)氏(84)のノーベル医学生理学賞の受賞決定について、6日付の中国各紙は1面トップで取り上げた。持続的な経済発展へ科学技術の向上を重視する中国は、自然科学分野で初となる受賞を宣伝。個人の功績とともに「国家」を前面に押し出している。
新華社電によると、屠氏は5日夜、関係者に対し「(開発されたマラリア治療薬は)伝統的な中国医薬が世界の人々へ贈ったプレゼント。中国の科学事業、中国医薬の栄誉だ」と喜びを語った。
祝賀メッセージも国家の発展を強調したものが多い。李克強首相は、科学研究者らに対し「経済社会の発展と『イノベーション型』国家建設の加速に新たな貢献をするよう希望する」と表明。女性団体の中華全国婦女連合会も「(屠氏の)心から祖国を愛し人民に奉仕する高尚な心情を学び、中華民族の偉大な復興の『中国夢』実現へ貢献する」よう女性らに呼び掛けた。
6日付の共産党機関紙・人民日報は「真新しい窓を開いた」と見出しを掲げ、大きく業績を紹介した。
ただ、屠氏の業績は中国国内での評価より国外での授賞が先行した。新京報の社説は、屠氏が博士号や欧米への留学経験がなく、中国科学院などの会員でもない「三無科学者」と呼ばれていたことを指摘。受賞決定は「中国の科学技術界、人材の評価システムの不足も映し出している」と警鐘を鳴らした。