科学研究において一年で最大のイベントとも言えるノーベル賞の発表が、本日の生理学・医学賞を皮切りに、5日間にわたって行われます。発表の直前ではありますが、国内や海外のサイトなどで話題になっているものなどを調べつつ、個人的に気になるテーマを交えて、生理学・医学賞を受賞する可能性がありそうな5つのテーマをご紹介します。
遺伝子編集技術(CRISPR/Cas9)
国内外のあらゆるサイトで、昨年から生理学医学賞の候補に必ずと言ってよいほど挙がってくるのが「CRISPR/Cas9(クリスパー・キャスナイン)」と呼ばれる技術です。
この技術は、ウイルスが持つ面延期システムを応用することで、DNA分子を好きなところで切断したり、切断した分子鎖を互いにくっつけることが出来る技術で、テクニカルな簡便さに加えて、細菌から植物、マウス、魚類などに至る非常に幅広い生物に適用することが可能です。
先月には、改良版について報告した論文も発表されているなど、まさに大注目の技術ではあるものの、仮に受賞するとしても化学賞になるのではないかとの予想もあります。
オートファジーのメカニズム解明
オートファジーは、細胞が栄養不足などのストレス環境下に置かれた場合に、細胞内で不要になったタンパク質などを取り込んで新たなアミノ酸などを作り出す細胞内の「リサイクル屋」で、生物の成長プロセスや代謝に深く関わっていると考えられています。
近年になって、遺伝子レベルのメカニズム解明や詳細な作用機序の理解が進んでおり、アルツハイマーやパーキンソン病をはじめとした様々な疾患との関連性について報告した論文も数多く発表されており、CRISPRと並んで受賞の可能性が高いとされている研究領域です。
エボラ出血熱の新規治療法の開拓
昨年、リベリアやシエラレオネなどのアフリカ諸国で発生したエボラ出血熱の大流行は(限定的ではあったものの)一時は米国へも飛び火するなど、世界中に大きな混乱をもたらしました。
高い致死率にも関わらず、効果的な治療法が存在していなかったエボラですが、昨年には欧米の製薬会社などによって治療効果の高い新薬も開発され(過去記事)、臨床試験が進められています。
ただ、こういった特効薬については製薬会社の価格設定が高すぎるために途上国にはなかなか行き渡らないという現状もあり、「人類への貢献」を掲げるノーベル賞に値するものと評価されるかは見えない部分もあります。
がんの免疫細胞療法
がんの治療といえば、抗がん剤の投与か放射線療法を組み合わせたものが一般的ですが、最近になって新たな治療法が注目を集めているのが免疫細胞療法と呼ばれる治療法です。
これは、患者自身の体内から取り出した免疫細胞を人為的に活性化させることでがんへの攻撃力を増大させ、再び体内に戻すことでがんに対する攻撃力を高めようと言うもので、自分の体の中に元々あった細胞を使うために身体への負荷が比較的少なく、副作用のリスクも低いと言われています。
昨年には、アメリカ国立がん研究所のグループが、上皮がんの治療に成功した(がん組織の縮小)とする論文をScience紙面に発表しており、大きな注目を集めました。治療費が数十万円から数百万円ほどかかるために普及がなかなか進んでいない現状はありますが、今後の技術革新によってコストを低減することが出来れば、がんの根治法につながるかもしれません。
ノーベル賞の発表は、ノーベル賞の公式サイトで中継されるほか、Youtubeの公式チャンネルやニコニコ生放送などでも番組が放送される予定となっています。