北は中国、東西南はインドと国境を接する"幸福の国"ブータン。人口75万人ほどの小さな同国で現在、薬物事犯の逮捕者が2年前の倍に上るほど急増、薬物汚染が深刻な問題となっている。覚せい剤使用者、所持者には重罪が科せられる同国だが、日本からはその刑期を疑問視する声が多数上がっている。
2011年に来日したワンチュク国王が「イケメンすぎる」と話題になったことが記憶にも新しいブータン。同国はGDP(国民総生産)ではなく、GNH(国民総幸福量)という独自の指標を掲げている。さらに、GNHの最大化を目標としており、2005年の国勢調査では、国民の97%が「とても幸せ」と「幸せ」と回答。"幸福の国"として知られている。
しかし現在、そんなブータンで薬物が蔓延し、逮捕者は1,000人を超える勢いだという。中には14歳から覚せい剤を使用する若者も見られるなど、その背景には高い失業率や、インドと国境を接するブータン独自の事情があるようだ。
ブータンのドラッグ常習者である20代の男性は、「ドラッグ? みんなやってるよ」と、さも平然と語る。さらに、「ドラッグはタブレット型の合成麻薬で、種類はスピードとかいろいろさ」と各種の覚せい剤を使用しているようで、値段は1ケース150ヌルタム(267円)からやや値上がりし、最近では250ヌルタム(445円)になったとのこと。なお、入手方法については「インドから持ち込んでる知り合いから」だそうだ。
"幸福の国"とは思えないこのブータンの薬物事情に、世間からは「偽りの幸福に疲れたんだろう」「シャブセックス的な幸福?」「幸福なのにドラッグかい?」「幸福の科学ってか」など揶揄する声が上がった。また、「中国あたりが意図的に流してる気がする」「悪の裏には必ず中国がいる」など、インドからのドラッグ流入に中国が絡んでいると睨む人も見られた。
また、日本では覚せい剤を使用した場合10年以下の懲役が科されるのだが、ブータンは"罰則が重い"とされながら使用者・所持者には"3カ月の懲役"と、日本に比べだいぶ刑期が短い。それに対しても、「刑期(笑)」「3カ月の懲役って重いか?」「3カ月で重いなら、日本は超絶重いだろうが!」と罰則の軽さを指摘する声が上がり、中には「3カ月で済むならヘロインやコカインやってもいいって思える」といった声まで。
さらに、「安すぎて怖い。アウトレットか」と値段に恐怖を感じる人もいる。安いドラッグというと、2010年頃にロシアで問題となった通称"クロコダイル"が思い出される。同ドラッグは、知識のない素人でも安価で簡単に製造できる合成麻薬なのだが、手や足、あるいは頭部までが溶けてしまうことがあるほど恐ろしいもの。死者も多数続出し、その危険性から"肉食ドラッグ"とも呼ばれた。
覚せい剤でハイ(灰)となり、違う意味で"幸福の国"となっているブータン。同国ではドラッグ中毒から立ち直り、社会復帰を目指すためのNGO団体「Chithuen Phendhey Association(CPA)」を設立し、対策に乗り出しているという。その前にまず、刑期について考え直したほうがいいのではないだろうか。
※画像は、Arian Zwegers Paro, Taktsang Goemba (Tiger's Nest)/from Flickr CC BY 2.0