ノーベル物理学賞受賞の吉報は、母の誕生日前日に届いた。「賞だけでもうれしいが、誕生日プレゼントみたいで何十倍、何百倍もうれしい」。東京大宇宙線研究所長、梶田隆章さん(56)の母朋子さんは7日、81歳の誕生日を最高の形で迎えた。
朋子さんと父正男さん(78)は6日夜、埼玉県東松山市の自宅のテレビで受賞決定を知った。梶田さんはこれまでも候補に挙がっていたが、年齢の若さなどから「今年はないだろう」と思っていた。両親は「びっくりした」と口をそろえる。
直後に梶田さんからうれしそうな声で電話があり、朋子さんは「おめでとう。良かったわね。またゆっくり話そう」と返したという。
両親によると、梶田さんは子どものころから「やると決めたことにはいちず」で、高校入学後は弓道に熱中した。幼いころから読書も好きで、目の疲れを心配した朋子さんから休息を促されても、廊下で隠れて本を読み続けた。
3人きょうだいの長男として、弟や妹の面倒を見る頼もしい面もあったという。吉報を聞いて都内から駆け付けた妹の渡部真由美さん(49)は、ボール投げを教わったり、一緒にトランプをしたりした幼い頃を思い出す。
「穏やかな優しい兄。いつも一緒に遊んでくれた」と懐かしみ、科学界最高の栄誉に「夢のようで、信じられない」と驚きを隠せない。
帰って来たら改めて「おめでとう」と声を掛けたいと話す朋子さん。「忙しくなるだろう。体に気を付けて」と息子を気遣った。