ギリシャにおけるアジャイルとリーンの採用事情

ギリシャでは,中小規模の企業がアジャイル的な作業方法を導入しているのに対して,大規模な組織のアジャイル採用例はそれほど多くない。その一方で,地元企業のアジャイルに対する関心は高く,多くの企業がアジャイルの価値観や原則の採用を開始している。アジャイルミートアップでは,スクラムとかんばんのどちらを採用すべきか,スタートアップがスクラムを採用するには,固定価格とスコープ契約とタイトなスケジュール,生産性,チームでの幸福感といった話題が議論されている。

Agile Greece Summit 2015が9月18日,ギリシャのアテネで開催される。InfoQでもQ&A,ニュース,記事で,このイベントをお伝えする予定だ。

InfoQでは,アジャイルコーチでスクラムマスタであり,Agile Greeceアジャイルコミュニティを創設してイベントを主催するYiannis Mavraganis氏にインタビューして,ギリシャにおけるアジャイルの実践状況,同国コミュニティで採用されているアジャイルとリーンのプラクティス,ギリシャ初のAgile Summitとミートアップで取り上げるトピックについて聞くとともに,ギリシャおよび世界的なソフトウェア産業に対する氏の願望についても尋ねてみた。

InfoQ: ギリシャでのアジャイル実践の状況について,簡単に説明してください。

Mavraganis: 実を言うと,ギリシャでのアジャイルの状況については,まだ具体的な数字をお答えできるような調査の実施には至っていません。ただし,2年前から実施しているアジャイルミートアップを中心に,Agile Greece Orgとして知る限りでは,中小規模の国内企業の数社(主にソフトウェア企業)でアジャイル開発が導入されています。アテナのNokia Technology Centerなど,大企業でのアジャイル導入例もいくつかありますが,十分な地歩を築いたとは言い難い状況です。大規模なアジャイル移行が現れるのは,まだこれからだと思います。

よい兆候と言えるのは,ギリシャのソフトウェアコミュニティの中で,アジャイルやリーンに対する関心が急速に高まっていることです。私たちのAgile Greeceミートアップグループには670名以上のメンバがいますし,月例のミートアップにも毎回60名以上が参加しています。今週開催される初のAgile Greece Summitにも,250名以上が参加する予定です。

InfoQ: ギリシャのソフトウェア産業は,アジャイルやリーンのプラクティス採用に関して,どのような状況なのでしょうか?開発チームが一般的に使用しているプラクティスの例をあげて頂けますか?

Mavraganis: 世界的な傾向と同じように,ギリシャでも,アジャイルを採用する企業の大半がスクラムを実践しています。ギリシャには非常に才能のある開発者がいますから,継続的インテグレーションやテスト自動化といったアジャイルの技術的プラクティスについては,ソフトウェア開発プロセスとして公式にはアジャイル方法論を採用していない企業も含めて,かなり以前から導入されていました。

InfoQ: Agile Greece Summitを新たに開催しようとした理由は何だったのでしょうか?

Mavraganis: 先にも述べたように,地元のソフトウェア業界の関心が急速に高まっていることです。月例のミートアップでもはや不十分だと思ったのです。Agile Greece Orgとして,もっと大きな,ギリシャにおけるアジャイル採用を促進できるようなことをする必要がありました。特に,金融危機に始まった困難な時期である今,世界的な競争力を獲得するためには,生産性という武器がこれまでにも増して必要なのです。現時点で強調したいのは,トルコのアジャイルコミュニティと非常によい関係を持てていることです。彼らは同じようなカンファレンスをすでに実施していて,今回も私たちを励まし,サポートしてくれました。

InfoQ: サミットのセッションについて何か教えてください。 カンファレンスプログラムではどのようなトピックを取り上げる予定で,それらを選んだ理由は何ですか?

Mavraganis: 今回のサミットの目的は,すべてのレベルに必要な刺激を提供することで,これまでより多くのギリシャ企業,特に大企業がアジャイルの価値と方法論の導入を始めてくれることです。経営者や役員,チームリーダといった人たちに,世界中でアジャイルが実践されている様子を見てもらい,チームの生産性や幸福感といった面での大きな効果を示したいと願っています。そのために私たちは,幅広い話題を集めています。

アジャイルとリーンに関する現場の最新動向について,実践的な知識を1日で得ることができます。初回の今年,これほど素晴らしい講演者が揃ってくれたのは,本当に幸せなことだと思っています。

InfoQ: あなたはAgile Greece Meetupの主催者の一人でもありますが,ギリシャのソフトウェア開発者たちがどのようなことを話題にしているか,教えて頂けますか?それらは彼らにとって,どのような関係があるのでしょう?

Mavraganis: 私たちのミートアップで議論されている話題は,程度の差こそあれ,世界中のアジャイルミートアップで議論されていることと同じだと思います。いくつか紹介しましょう。

  • スクラムとかんばんは,どちらがベストか,その理由は何か?
  • 効果的なコミュニケーションと透明性を当然のものとする,2,3人のスタートアップでも,スクラムを実践する価値はあるのか?
  • 結局のところ,IT部門だけがルールを守って,ビジネス/マーケティング/セールス部門がそうでないような状況で,本当に正しい方法でアジャイルを適用することは可能なのか?

特に話題になることが多いのは,ユーザとの価格/範囲に関する契約が完了していて,かつスケジュールが厳しい場合,果たしてアジャイルを適用すべきか,どうやって適用すべきか,ということです。ブログの運用もとても活発で,世界レベルの専門家から地元のアジャイル実践家まで,興味深い記事が掲載されていることも,合わせてお伝えしておきたいと思います。

InfoQ: ギリシャや世界のソフトウェア産業を支援するために,何かをひとつ変えることができるとしたら,何をしたいと思いますか?

Mavraganis: 開発チームにもっと敬意を払ってほしいですね。顧客満足度と同じくらい,チームの幸福は重要なのです。