太陽系のなかでも特徴的な「土星」。シンボルである「環(わ)」はちびっ子の絵にも登場するほど有名ですが、10年後に「消滅」してしまうのはご存じでしょうか?
土星の環の正体はおもに氷で、直径27万kmにもおよぶ巨大な円を描いているのに、厚さは1km程度しかないため、真横からは見えない「ほぼ2次元」な存在です。土星の地軸は傾いているので、約15年周期で地球に「真横」を向け、つぎに見えなくなるのは2025年。10年後に「環のない土星」が拝めるようになるのです。
■コピー用紙なら、直径24メートル相当
太陽系の6番目の惑星である土星は、木星に次いで2番目に大きい惑星です。そのため、家庭用の望遠鏡でもカンタンに観測でき、天体観測では人気の存在です。環の材料はおもに氷で、数cmから数mのものまで大小さまざま。これが太陽の光を反射するため「環」のように見えるのですが、つながっているわけではないので円形の「雲」と表現したほうがわかりやすいでしょう。
土星の環の直径は約270,000km、複数で構成され、
・A環 … 約15,000km
・B環 … 約25,000km
が代表的で、土星の絵に二重の環が多いのも、この2つがよく見えるからです。近年になって探査機があらたな環を発見したため、土星に近い順にD、C、B、A、F、G、Eと不規則になっていますが、ここでは古来から「環」とされるA/Bにしぼって説明します。
土星の環の大きさを身近なものと比較してみましょう。直径の27万kmは、
・地球を21個ならべた大きさ
・光が届くのに0.9秒かかる距離
・地球から月までの「7合目」
と巨大なのに、厚さはだいたい1km、多く見積もっても10km程度しかありません。一般的なコピー用紙の厚みは約0.09mmなので、もしこれで土星の環を再現するなら、
・土星の直径27万km : 土星の厚さ1km = 紙の直径 : 紙の厚さ0.09mm
から、なんと直径24mの円を作らなければなりません。シャツのなかで生きるカエルのように、土星の環は「ほぼ2次元」な存在なのです。
■観測しやすいのは2038年
この薄さが原因で、およそ10年後、土星の環は消えてしまいます。地球に「真横」を向けるため、環が見えなくなってしまうのです。
地球の自転軸は約23.4度傾いているため、公転にともない太陽光が当たる/当たらない部分が生まれ、これが季節を生み出します。土星も地軸が約26.7度傾いているため、
・環が見えない(地球に真横)
・環の表側が見える
・環が見えない(地球に真横)
・環の裏側が見える
をおよそ30年サイクルで繰り返し、15年ごとに環がみえなくなる「消失現象」を繰り返しているのです。つぎに真横を向けるのは2025年、いまから10年後に環のない土星が拝めるようになるのです。
ただし、地球も太陽のまわりを公転し、土星との位置関係も日々変わっているので、観測しやすいのは2038~2039年と、いまから四半世紀も先の話。興味のあるひとは、元気に観測できるよう、ジョギングでも始めるのが良さそうです。
■まとめ
・土星の「環」の直径は約27万Km。地球が21個入るほど巨大
・それなのに厚さは1km程度で、ほぼ2次元
・厚さ0.09ミリのコピー用紙で再現すると、直径24メートル相当
・極端に薄いため「真横」からは環が「消失」したように見える
・つぎに環が消失するのは2025年、観測しやすいのは2038~2039年ごろ
(関口 寿/ガリレオワークス)