オランダのロックバンド、こんな工夫で低予算なのに一流のPVを作り上げる

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低予算、少人数のチームでも、アイデアさえあればインパクトある映像は作れるんですね。

現在、モーションデザインの分野で静かに話題になっているのが、この不気味な、それでいてテンションのあがるミュージックビデオ。

オランダのロックバンドDe Staatの為に制作されたのですが、作ったチームはたったの3人で、撮影からモーションキャプチャー、CG合成まで全て自分たちで行い、完成までには半年以上かかったそうです。

ボーカルのTorre Florimが呪術医となり、裸の男たちを意のままに操るというシンプルな内容ですが、2,000人の群衆がシンクロしながら動く様は、例えモロ分かりのCGであっても迫力があります。とにかくご覧あれ。



この映像の興味深い点は、その群衆の制作方法です。通常こういった群衆のアニメーションには、3DCGソフトウェアの群衆シミュレーションが使われます。これだけ大勢のキャラクターに一人ひとりアニメーションをつけるわけにはいかないので、ソフトウェアにキャラクターを自動複製させ、予め作ったモーションをキャラクターに割りあてます。

その後、群衆全体の動きを決めて、動きに従って一人ひとりのモーションを再生させる事で完成します。ソフトによっては、衝突などに合わせてモーションをシミュレーションさせて更にリアルな群衆を作り出す事も出来ますが、このプロジェクトにおいては理想的な動きを作る事ができなかったそうです。

そこで登場したのが、映像のデジタル合成やモーショングラフィックスの作成ソフト、After Effects専用の3Dプラグイン、Element 3Dでした。



After Effectsは本来、グリーンスクリーンの合成やモーションタイポグラフィ等、2Dのアニメーションを念頭に置いたソフトでした。しかしバージョンを重ねる毎により3Dアニメーションも視野に入れた機能を多く取り入れており、Element 3Dはサードパーティ製ですが、AE単体では難しい3Dアニメーションを可能にするプラグインとして、無くてはならない存在になりました。それまでであれば高価な3DCGソフトを購入しなければ出来なかった事が、AEとElement 3Dだけで出来るようになったのです。

とはいえ、あくまで2D映像用のソフトに3Dの機能を追加するものなので、細かいモデリングは出来ないし、キャラクターにボーンを仕込む事もできないので、こういった人型のキャラクターにAE内で動きをつける事も困難です。そこで彼らは、モーションキャプチャーのデータを一度3Dソフトウェアに取り込み、そこで9人のキャラクター一人ひとりに一曲分のモーションを割り当てて書き出し、それをElement 3Dで読み込んでキャラクターを自動複製させるという力技を行いました(モーションデータだけで80GBもあるそうです)。

なんだ、結局3Dソフトが必要なんじゃねーか!と言われそうですが、本当なら30万円近くする群衆シミュレーションソフトが必要になるところを、AEとプラグイン、それも基本的には複雑な群衆シミュレーションは出来ないもので解決したところが非常に珍しく、素晴らしいのです。考えようによっては、Blender等のフリーの3Dソフトでキャラクターを作り、モーションキャプチャーに頼らず手付けでアニメーションを行えば、私達でもAEとElement 3Dで似たような事が可能なわけです。

一昔前ならあらゆる機材やソフトが必要だったものが、ここまで手軽になるというのは驚きです。ツールが揃っているなら、後はアイデア次第。ちょっと自分の作品を作りたくなってきた!


source: Motionographer
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