卵が大好きな私としては、ゆで玉子を生卵に戻すと聞いただけで、震えがきます。そんな魔法のようなことができるのかと。神の怒りに触れやしないかと。火の中から蘇る不死鳥フェニックスの名を冠した、不思議な方法「フェニックスエフェクト」とは何なのでしょう。
フェニックスエフェクトは、ロシアのItmo大学の研究員が発見した、バラバラになったタンパク質を、熱を加えることで元の状態に戻す方法です。
例えば、金属だと冷やして固めて、熱して溶かしてが可能です。しかし、タンパク質が固まるのは「変性」という性質が原因。その名のとおりタンパク質の構造、性質自体が変わるので、固まったものをもとに戻すのは不可能です。が、これをミクロレベルで戻すというのが、今回のフェニックスエフェクトの研究です。変性したタンパク質を、それを少しずつジェル状へとする溶液につけます。すると、殻のような状態へ代わり、変性する前の状態のプロテインへと戻るのだといいます。…ちょっと、卵を想像しつつ考えるとさっぱりわけがわかりません。
それもそのはずで、フェニックスエフェクトは、ゆで玉子をそっくりそのまま生卵に戻すことはできないのです。研究で成功したのは、卵の酵素部分を元の状態に戻すというところだけ。まだ、現段階ではゆで玉子から生卵への魔法は使えないのですね。ガッカリなような、ホっとしたような。
この実験で、研究員すらも驚いたのは、フェニックスエフェクトによって元に戻された酵素は、その働きが180%にアップしていたということです。今後は、この結果を骨組みとして、タンパク質の新たな働きを探っていくといいます。さすれば、ゆで玉子が生卵に戻る日もいつかやってくるというものでしょう。
source: Enzyme renaturation to higher activity driven by the sol-gel transition: Carbonic anhydrase
Esther Inglis-Arkell - Gizmodo US[原文]
(そうこ)