「残業して長時間働いている人が仕事熱心」という考えは古くなりつつあるが、今なお、ダラダラと働き定時を過ぎてしまう「無駄な残業」は日本にはびこっている。
残業代稼ぎのためか、と冷たく見る向きもあるが、「ダラダラ残業」の理由はそれとは限らないよう。「子どもが宿題を終わらせるのにダラダラ時間をかける」のと似た心理が働いているケースもあるようだ。
15分でできる宿題を30分かけるようになる親の言葉教育者の陰山英男氏が投稿した(2015年9月17日)、以下のツイートが話題になっている。
「サッと宿題をした子はうれしくて『できたっ。』と言って、親に見せにくる。しかしその瞬間、親はほぼ間違いなく、言ってはいけないことを言う。『そんなに速くできたのなら、余った時間にもう一枚プリントやったら!』それを聞いて子どもは15分でできる宿題を30分かけるようになる」
このツイートが、3週間に満たないうちに1万回以上リツイートされ、育児中の人々のみならず、ビジネスパーソンからも多くの反応があった。
「ああ、それで日本中で無駄な残業が蔓延してるんですね!テキパキと短時間でこなして評価される。それが思いがけずペナルティを与えられる体験に無意識に防御反応が起こっている。そこが無気力の根源なのかな?」
「なるほど。これで10分の仕事を1時間でとかいう事例が出てくるのか」
「まさに仕事もコレが多い。仕事ができる人が早く終わらせても、できない人のフォローをするので帰れない現実」
ジャーナリストの佐々木俊尚氏も、陰山氏の指摘が大人の社会に通ずると感じたようで、
「ダラダラ残業の遠因はここにある気が。仕事が早いと仕事が増える問題。フリーランスだとそれでいいんですけどね」
とのツイートを投稿している。
課題を早く終えた人にはどう接するべきかでは、宿題を早く終えた子にはどう声をかけたらよいのか。陰山氏はその後のツイートで、
「最初にやること決めておいて、できたら良くできたね、でいいと思います。それで、内容を見ながら、かかっている時間をそれとなく気にして、できるだけ早くなるように声かけしてあげれば。とにかく追加は、あまり効果的ではありません」
「褒めて終わりですよ。もうひと頑張りはやめた方がいい。早くしたら得するということを習慣づけるんです。私は授業でも、今日の授業は、これができたら終わりと最終問題を書くと、子どもは一気にやってました。この方が速いし、覚えもいい」
と持論を展開。
「余った時間はお絵描きタイムだろー」という返信には、「賛成!おやつタイムなら、なおいいかも!」と答えている。
勉強も仕事も、目標を達成した先にご褒美や休養があれば次もまた頑張れる、ということだが、今回の陰山氏のツイートへの反応を見るに、多くの現場でそうした方針は取られていないのが現実だろう。「仕事を効率よくサッサと終えれば得をする」という社会の実現には、まだまだ課題がありそうだ。(MM)