社会現象を巻き起こした『アナと雪の女王』(14)で、歌手、女優としてだけではなく、声優としても大きく躍進した神田沙也加。3DCGアニメ映画『GAMBA ガンバと仲間たち』(10月10日公開)では、ガンバと交流するヒロイン潮路役の声優を務めた神田にインタビューし、声優業についての思いを語ってもらった。
『GAMBA ガンバと仲間たち』は、『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズのVFXや、『STAND BY ME ドラえもん』(14)などの3DCGアニメを手がけてきた映像製作会社・白組が、構想15年、製作10年、製作費20億円をかけて放つ勝負作。原作は、斎藤惇夫の児童小説で、小さいネズミ、ガンバたちが力を合わせ、巨大な敵に立ち向かうという冒険物語だ。
神田は、最初に本編映像を観た時、驚嘆したと言う。「すごく迫力があり、日本のフルCGは本当にすごいなと思いました。日本人ならではの繊細さがあり、作品自体のスケールも大きくて。本作は、先輩方のお胸をお借りした上で、是非みなさんにお見せしたいと思いました」。
実は、彼女が元々いちばんなりたかったのは声優だったそうだ。「小学校の時、シミュレーションゲームをよくやっていたのですが、ある日、うっかりミュートボタンを押しちゃって。キャラクターの声がなくなったら、全然生きている感じがしないと思ったんです。だから、最終工程で声優さんたちがしている仕事にはすごく大きな意味があり、命を入れるという作業なんだなと、とても感動しました」。
『アナと雪の女王』は、声優としての人気を決定づけた作品だったが、神田自身はその手応えをどう感じていたのか。「いままでは歌手、女優だったのですが、『アナ雪』で紹介してもらう時、声優というのがカテゴリーとして増えていて。私はその時、一部の方にそうやって見ていただけているのなら、すごく光栄だと思いました。でも、私はいまも自分がプロの声優だとは思えなくて。だからまだ、(声優の)学校には在籍していたいし、そういうふうに思える日は来ないかもしれないです。うれしいんですが、恐れ多くて」。
『アナと雪の女王』では、第9回声優アワード主演女優賞も堂々受賞している神田だが、彼女自身はその栄誉を謙虚かつ冷静に受け止めている。「声優アワードは、自分も毎年注目していたショーで、私自身はアニメ作品だけをやってきた方々が受け取るべき賞ではないかと思っていたんです。だから、非常にありがたいのですが、受け取っても良いものかと思い、当時はすごく悩みました」と告白。
実際、彼女はその賞を受賞したが、それ以降、一層、声優業への情熱はさらに増していった。「賞をいただいたからには、賞に恥じない活動をやらなければダメだと思いました。実際、その場にいらした声優の先輩方は、自分が大好きでずっと見てきた方々ばかりだったので。だからこれからもオーディションはどんどん受けたいし、他のことももちろんやらなきゃいけないけど、声優をやっている時間をもっと作りたいと思っています」。
『GAMBA ガンバと仲間たち』で彼女が演じた潮路は、可憐でかわいらしいが、勇気があり、芯が強いキャラクターで、まさに神田と重なる。これぞ、彼女が言う「命を入れる」ということなのだろう。映像だけではなく、豪華声優陣が織りなすドラマにも大いに期待してほしい。【取材・文/山崎伸子】