女性や初対面の仕事相手とうまく話すためにアルコールに頼ろうとしたことがある?
実は今、そのアルコールがきっかけで体を壊す若者が急増しているというのだ。
その彼らには共通した特徴がある。それは人見知りで内気なコミュニケーション障害(コミュ障)であるということ。まいんずたわーメンタルクリニックの院長・仮屋暢聡(のぶとし)氏はこう語る。
「自分のコミュニケーション能力を補完するために酒の力を借りると、時に“酔った勢い”が功を奏し、対人関係がうまくいくことがあります。すると、その成功体験が忘れられなくなり、『自分は酔えばコミュニケーション能力が上がる』と勘違いして飲む頻度や量がどんどん増加するんです。その状態がエスカレートし、中毒に陥る。そんな若い患者さんが増えていますね」
さらに、他にも“コミュ障”だからこその危険性があるという。
「コミュニケーションが苦手な彼らは対人関係に多大なストレスを感じていたり、心を許せる友人や恋人がおらず、孤独を感じていることが多い。その苦しさから逃れるため、ひとりの時でも酒を飲み、生活からアルコールを抜く時間がなくなってしまう。これがコミュニケーション能力の低い人が急速にアルコール依存や中毒に陥るケースが多いもうひとつの理由です」
ではその“コミュ障アル中”に陥ると、肉体的にはどのような害があるのか?
「大量飲酒をすることで起こるのは肝機能障害。脂肪肝から肝炎、肝線維症、肝硬変へと悪化し、食道静脈瘤(りゅう)や痔(じ)静脈瘤を合併して吐血、下血します。他にもアルコールは脳を萎縮させるため、40代早期に認知症状が出ることもあれば、脳卒中を起こすこともあります。また酩酊の機会が増えるため、転倒事故や交通事故などにより命を危険にさらす可能性が高まることも忘れてはいけません」
恐るべきコミュ障アル中…なんとかしてお酒の力を借りずにカバーする方法はないだろうか? 心理カウンセリングルーム「ナチュラルリソース」のカウンセラー・酒井豊美氏に聞いた。
「コミュニケーションを取るためにお酒の力を借りるという発想に至るのは、人と対面した時に『自分が話さなければいけない』と考えてしまう真面目な人が多いです。ですが、コミュニケーションで大切なのは『聞く』ことだということを忘れずに!
こまめに相槌(あいづち)を打ちながら相手への理解を示し、肯定する。これさえできれば、十分コミュニケーションが取れ、相手からの好感を得られるという大前提の心構えが大事です」
でも大人数になると、雰囲気になじめず気まずくて飲んでしまう場合も…。
「意外と、大きな声で返事をしたり、笑ったりするだけで、その場になじむことができるものです。もし大きな声を出すのが苦手だという場合は集まりに参加する前に、人のいない場所で九九などを大声で唱えてから臨むと場の流れに乗れますよ」
女性がいるとお酒が進んでしまう人はどうすれば?
「『女性の前でいい格好をしたい』という思いを捨てましょう。彼女たちを家族や幼なじみの女性に置き換えて、そこまで特別な存在でないと考えるようにする。とにかく焦らず落ち着くことが大事です」
こちらが“つんのめらない”ことが重要なんですね。では対人関係のストレスがたまって、ついお酒を飲んでしまう場合はどうすれば?
「登山や釣りなど自然の中で楽しめる趣味を見つけ、健康的にストレス解消するよう心がける。アルコール依存症になると抜け出すことが難しくなってしまうので、早めの対策が大切です!」
コミュ障アル中は真面目な人間が陥りやすい。場を盛り上げなければという責任感やプライドを捨てることがまずは重要だ。
●『週刊プレイボーイ』42号(10月5日発売)では、さらにこの“コミュ障アル中”について『ウヒョッ!東京都北区赤羽』の著者・清野とおる氏にもインタビュー。そちらもお読みいただきたい。