おじいちゃんを助けたはずが、犯人に!? 中国“善意の人助け”にはスマホが必需品? | ニコニコニュース

鄭州の路上で、顔面から血を流して倒れている老人。周囲の人たちは、おそるおそると見るばかり
日刊サイゾー

 老人は自分で転んだのか、それとも、その老人を助けた人が実は老人を押し倒していたのか――。中国ではここ数年、これが焦点となる事件が何度か起こり、市民の関心を呼んでいる。

 今回、「新浪新聞」などが9月20日に報じた騒動の概要はこうだ。

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 19日、河南省の省都・鄭州の路上で、ひとりの老人が倒れているのが見つかった。夕方で人通りが多いにもかかわらず、周りの人は遠巻きにして見るだけ。彼らはそれぞれ自分のスマホのカメラで状況写真を撮り、互いに証人になることを確認し合ってからようやく、老人を助け、救急車と警察を呼んだという。

 その翌々日、今度は江蘇省徐州市の路上で老人がいきなり発作を起こして倒れ、たまたますぐそばを通りかかった医師が、周囲の人に「私は通りがかりに助ける者だ。みなさん証人になってくれ」と声をかけてから処置に当たったというニュースを、地元紙「揚子晩報」が伝えている。

 人々が恐れているのは、倒れている老人を助けることで、かえって自分がその老人を押し倒した犯人にされてしまうことだ。

 先月8日、安徽省淮南市で、自転車に乗った女子大生が道端を歩いている老人の脇を通り過ぎたところ、老人が倒れてしまった。老人の声を聞いた女子大生が自転車を止めて老人のところに戻り、助け起こして救急車を呼んだところ、老人が警察に「彼女にぶつかられて倒れた」と訴えたのだ。女子大生のほうは「倒れているお年寄りを見て助けただけなのに、何が間違っていたの?」と「微博」(中国版Twitter)上で述べている。

 その後「女子大生が現場で“私がぶつかった”と言っているのを聞いた」という証言や「女子大生と老人の間は離れていた。ぶつかるわけがない」という証言などが出ており、真相ははっきりしない。路上の監視カメラにも、肝心の場面は映っていなかった。

 結局、警察は調査の末、事件から2週間たった21日に「女子大生が通り過ぎた時にぶつかった」と判定。事故の主な責任は女子大生側にあると発表した。

 また19日には、広西チワン族自治区来賓市で、道端に倒れてケガをしていた老人を女子大生が助けて病院に連れていったところ、のちに老人とその家族から「彼女にぶつけられてケガをした」と警察に訴えられるという事件も起こっている。こちらのほうは監視カメラの映像により、女子大生はぶつかっていないということが無事に証明されている。

 善意の人助けをしても、その恩をあだで返されてしまうかもしれない中国。実際には親切な人が多いのに、住みづらい社会になってしまったものである。
(文=佐久間賢三)