国連教育科学文化機関(ユネスコ)は10日、重要な歴史文書などの保存を目的とする世界記憶遺産に、第2次大戦後のシベリア抑留者に関する資料「舞鶴への生還」(京都府舞鶴市申請)と、政府推薦の国宝「東寺百合文書」を登録したと発表した。日本からはこれまで慶長遣欧使節の関係資料など3件が登録済みで、今回で計5件となる。
中国が推薦した南京事件に関する資料も登録された。過去には旧ソ連からの独立を求めたバルト3国の「人間の鎖」や植民地に関する記録など、国により立場が異なる案件の登録例もあるが、歴史的評価や事実認定が固まっていない事柄の登録は異例。従軍慰安婦資料については不登録だった。
シベリア抑留資料は、舞鶴港に帰還した抑留者の手記など、舞鶴引揚記念館が所蔵する570点。抑留中の生活や心情を、シラカバの樹皮にすすで作ったインクでつづった「白樺日誌」や、息子の生還を待ち続ける母親の姿を歌ったヒット曲「岸壁の母」のモデルとなった故端野いせさんの手紙などが含まれる。
東寺百合文書は京都市の東寺に伝わる、8〜18世紀の約1000年間にわたる約2万5000点もの古文書群で、足利義満の直筆や織田信長の書状もある。寺院運営などの仏教史に加え、当時の社会状況や和紙発展の歴史を示す貴重な資料で、1997年に国宝に指定された。
いずれも日本ユネスコ国内委員会が2014年6月に推薦を決定。4日からアラブ首長国連邦のアブダビで開かれたユネスコ国際諮問委員会が審査していた。