それは、太陽系に浮かぶ巨大な磁石。
NASAでは現在次なる惑星探査プロジェクトを選定中で、現段階で候補は5つに絞られてきました。金星探査とか、木星軌道上の小惑星を見に行くといったアイデアもありましたが、ちょっと見慣れないテーマも浮上しています。
その変わり種探査の対象は、火星と木星の間の小惑星帯にある「Psyche(プシケ)」。プシケのほとんどは金属、それも磁石のようなものでできていて、原始惑星の核がむき出しになったものだと考えられているんです。
プシケなんて聞いたことない!と思われても当然です。だってまだその実態がほとんどわかっていないし、わかっていることでさえ、かなり不思議です。
まずプシケは幅200km以上と、小惑星としてはかなり大きいという点でも普通じゃないのですが、それだけじゃありません。ほとんど全体が金属、具体的には鉄でできているんです。地球とか火星みたいに、岩石っぽい部分がほとんどないんです。
さらにプシケの探査を提案しているLindy Elkins-Tantonさんたちは、最初から全体が鉄だったわけじゃないと考えています。かつてプシケの表面は、もっと普通の岩石のようなものだった可能性があります。そしてあるとき、非常に大きな何かとの衝突が(もしかしたら複数回)起こったのだと考えられます。
その衝突が非常に激しかったために星の核の部分だけが残され、それが冷却されたのが現在の鉄のかたまりなのだと考えられています。プシケを探査すれば不思議な鉄だらけの世界が見られるだけではなく、惑星の核の成り立ちについて未知のことがわかるかもしれません。しかもその核は、下で説明するように巨大な磁石かもしれないのです。
プシケが巨大な磁石ではないかと考えられる理由は、プシケの冷却のパターンと関係しています。惑星の冷却や固化には、下の図のようにいくつかパターンがあります。内部の物質の層がきれいな同心円状(Concentric)なのか、複雑な樹状(Snow/Dendritic)なのか、または内側から外側に向かって固化している(Outward)のか、外側から内側に向かっている(Inward)のか、それらによって星が成り立ったときの過程が推定されます。
そしてElkins-Tantonさんたちいわく、「核が外側から内側に向かって固化、つまり外側が結晶化した物質であり、内部が液状の構造」であるなら、「プシケ全体が磁気を帯びているはず」なのです。
プシケの研究は、NASAの次世代探査プロジェクトの候補のひとつです。各候補はこれからコンセプト設計を進め、2016年9月に再度審査され、最終的には1つか2つが採用されます。選ばれたプロジェクトは2020年にフライトを行ない、本格的な探査を開始することになります。プシケがその対象になるかどうかは来年までわかりませんが、もし採用されれば、太陽系の形成について今までにない発見ができるかもしれません。
Top image: Artist's concept of Psyche, NASA/JPL
Ria Misra - Gizmodo US[原文]
(miho)