アイルランドで同性婚が国民投票によって認められたり、アメリカの連邦最高裁が同性婚を認めない州法を憲法違反と判断するなど、世界各国で多様な「性」のあり方を認める動きが広がっている。その一方で、いまも差別や暴力に苦しむ性的少数者は後を絶たない。
「自分らしい性を生きる〜LGBTIの『私』が命をかける理由〜」(主催:アムネスティ・インターナショナル日本)と題された講演会が10月17日、東京・渋谷の青山学院大学でおこなわれた。「LGBTI」は、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、インターセックス(性染色体や生殖器の形態などが典型的な性別と断定しにくい人)の総称だ。
講演会には、南アフリカで、LGBTIの人々への暴力や差別をなくすために活動しているファドツァイ・ミュパルツァさんが登壇した。ファドツァイさんは、自身を「クィア(Queer)」(多数派とみなされる性の規範から外れる人)と自認している。
●アフリカの34カ国では「同性愛=犯罪」主催したアムネスティ・インターナショナル日本によると、アフリカでは、34カ国が法律で「同性愛」を犯罪と定めており、一部の国や地域では同性愛を理由に死刑に処せられる可能性もあるという。
ファドツァイさんが暮らす南アフリカでは、2006年に同性婚が認められるなど、法律の整備が進みつつあるが、市民の間には根強い偏見があり、同性愛嫌悪によるヘイトスピーチや、「矯正レイプ」と呼ばれる、同性愛を「矯正」しようとするための強姦がおこなわれることもあるという。
ファドツァイさんは「アフリカ大陸のほとんどの地域で、人権活動家が失踪させられたり、嫌がらせを受けることが続いている」と話す。危険や偏見にさらされながらも活動を続ける理由をこのように語った。
「恐れのために身体が動かない、麻痺している状態になってはいけないと思います。声をあげることをやめたら、暴力や嫌がらせはずっと続いてしまいます。
自由を求める、自治を求める、選択があることを求める、差別をなくすことを求める。こうしたことがすべて、活動を続けていく上でのモチベーションになっています」
(弁護士ドットコムニュース)