「とにかくわかりづらい」――、2007年から非難の的だったマクドナルドのメニュー価格がやっと変わる。日本マクドナルドは10月15日、それまで地域によってバラバラだった価格を26日から一本化すると発表した。
マクドナルドは2007年から全国6つの区域(現在は9つ)に分けて、人件費や家賃にあわせた「地域別価格制度」を導入している。
たとえば看板商品の「ビッグマック」は単品価格が330~400円となっている。地域的な偏在が大きいため、ホームページから価格のリストも消されている。今までは商品の価格を知るには店舗に行くしかなかった。
地域別価格制度を導入してから、店舗を訪れた顧客から「価格がわかりにくい」という不満の声が多く上がっていた。それでもマクドナルドがこの制度を維持し続けた理由は、人件費や家賃が高い都心などの地域だけで価格転嫁できるメリットがあったからだ。
2007年の導入からすでに9年経ったが、業績はどん底に落ちて、ようやく戦略の転換に着手したようだ。26日からは、全国約3000店の価格体系を統一し(特殊立地約40店を除く)、ビッグマックの価格は370円に一本化される。
会社側は「地域別価格制度の廃止ではない」(広報)と説明するが、全国99%の地域で同一価格帯となるため、実質的な廃止といえる。
目玉は200円という低価格
もうひとつの目玉は、低価格メニューの投入だ。「エッグチーズバーガー」などの3商品を終日200円で販売。ポテトやドリンクを含むセット価格を500円に設定し、値頃感をアピールする。
200円という価格設定について、サラ・カサノバ社長は、「満足感があり、リーズナブルなバーガーはないのか」という客の声に応え、既存の最も安い100円のハンバーガーと、最も高い400円のクォーター・パウンダーの中間に設定したと説明した。
ただし、マクドナルドは大胆な”値上げ”にも着手する。低価格商品の導入に伴い、2014年10月から始めた平日昼限定の割引メニューは廃止するとしている。
これまで「ビッグマック」セットは、平日の昼間は550円で買うことができた。26日に新たな価格制度が導入された後は、670円を払う必要がある。
もともと休日や平日夜間は、630〜670円という価格帯だったとはいえ、お昼時の値頃感は薄れてしまう。
さらに価格を統一したことで、全国の商品ベースでは70%が据え置きとなるものの、25%の商品が値上がりする。「ビッグマック」では約280店舗で40円の値上げとなっている。一連の施策をトータルで考えると、実質的な値上げといえる。
マクドナルドの試算によれば、今回の施策で売上高への影響は0.9%のプラスを見込んでいるという。15日に都内で会見したサラ・カサノバ社長は「(200円メニューは)マクドナルドだけが提供できる革命。お手頃さの新時代を切り開くもの」と自信を示す。
ただ、既存店売上高は客数が29カ月連続減少と、厳しい状況が続いている。手頃な新メニューを導入する一方で、大胆な実質値上げに踏み切るマクドナルド。両面戦略は吉と出るか。
(撮影:尾形文繁)