徹底解説!エヴァ新幹線はどこがスゴいのか | ニコニコニュース

徹底解説!エヴァ新幹線はどこがスゴいのか
東洋経済オンライン

第一印象は紫色の大蛇というべきか。10月19日、JR西日本の博多総合車両所。「エヴァンゲリオン」を模した500系新幹線「500 TYPE EVA」が、ついにベールを脱いだ。

JR西日本でエヴァ新幹線のプロジェクトがスタートしたのは2014年の秋。翌年が山陽新幹線40周年ということもあり、インパクトのある企画を考えていたところ、エヴァカラーの500系新幹線に行き着いた。

早速、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」を制作するスタジオ「カラー」に話を持ちかけたところ、今年はテレビシリーズ放映開始から20周年とあって、トントン拍子に進み、夢のコラボレーションが実現したという。

■アニメのスタッフが車両をデザイン

エヴァシリーズのメカニックデザインを手掛けた山下いくと氏が、エヴァ新幹線のデザインを担当。原作・総監督の庵野秀明氏が監修を務めた。山下氏は500系新幹線の大ファン。「エヴァ的カラーリングにするとともに、元のデザインを生かして未来からやってきた500系みたいにできたらいいな」とコメントをしている。

外観は、先頭車だけでも薄い紫、深い紫、黄緑、赤、グレーの5色に塗り分けられている。基本的には「エヴァ初号機」に使われている色だが、グレーは500系新幹線に使われているのと同じ色だ。ちなみに、報道陣のいた位置からはよく見えなかったが、屋根に当たる車両上部は500系の色がそのまま残されているそうだ。

車両外観に装飾を施す場合、塗装ではなく、カラーフィルムによるラッピングを行うことがある。最近では、東京メトロ銀座線の新型車両がその一例だ。往年の浅草―上野間開業当時の車両をラッピングで再現した。

エヴァに見えても、エヴァではない!?

エヴァ新幹線にもラッピングという選択肢はあったはずだが、「安全性の面から塗装を選択した」(JR西日本)。車両の一部にフィルムを貼るのは新幹線でも広く行われているが、全面フィルムとなると、空気抵抗の多い場所ではフィルムが緩んだり剥がれたりする可能性があるからだ。

塗装で決まったものの、5色に塗り分けるのは簡単でない。塗っては乾かし、を繰り返す。塗装に要した時間は先頭車で1週間、中間車で4~5日。8両編成なので、塗装だけで1カ月以上かかったことになる。この500系新幹線は8月末まで「プラレールカー」として運行されていたという事情を考えれば、かなりタイトな製作スケジュールだったことがうかがえる。

アニメシリーズのデザイナーが手掛けただけあって、完成した車両は確かにエヴァ初号機をイメージしているように見える。だが、その車体に、本編に登場するようなメカやマークなどの意匠は一切貼られていない。先頭車に「500 TYPE EVA」と記されているのみだ。

■エヴァに見えるが、エヴァではない

実はこのデザイン、エヴァンゲリオンに見えるが、エヴァンゲリオンではない。エヴァンゲリオンそのものだと、広告と見なされる可能性があるためだ。その場合は「屋外広告物」として規制の対象となる。

車両の内部はこうなっている

バスや鉄道車両に商品広告を貼り付けるラッピング広告は、屋外広告として一般的に行われている。その内容は自治体によってさまざまだ。

たとえば、表示できる広告の範囲は、神戸市では底面を除く車体の表面積の3分の1以下、広島市では1側面の表示面積が4平方メートル以下、といった具合。エヴァ新幹線のデザインが屋外広告と見なされたら、自治体ごとで異なる規制をすべてクリアしなくてはならない。

営業距離が644キロメートルもある山陽新幹線は、多くの自治体をまたがって走る。そのため、広告と見なされないデザインにする必要があった。

こうした経緯もあって、完成した列車はどこから見てもエヴァンゲリオンの世界観にマッチしているものの、直接的な表現は一切ない。「500 TYPE EVA」の表記がぎりぎりセーフなのだ。

■内装はエヴァの世界観が"暴走"

一方、内装については、エヴァの世界観が“暴走”している。

1号車には、事前予約した人だけが入室できる「500 TYPE EVA 展示・体験ルーム」がある。実物大のコックピットに搭乗すると、モニターに新幹線の前面展望映像が映し出される。

それを見て「なんだ、『電車でGO!』か」と侮ってはいけない。突如、「使徒」(作品中に登場する敵キャラクター)が襲いかかってきたかと思えば、女性パイロット「惣流(式波)・アスカ・ラングレー」が操縦する「エヴァ弐号機」が並走してきた。この映像は迫力満点だ。

ほかにも、1号車にはエヴァに登場するキャラクターのパネルが展示される。この日飾られていたのは、もう1人の女性パイロット「綾波レイ」だったが、一定期間ごとにほかのキャラクターと入れ替えるという。

1号車以外にも見どころは盛りだくさん

エヴァのジオラマも展示されており、目をこらしてよく見ると、エヴァの登場人物が豆粒のように立っているのが確認できる。

2号車はエヴァ仕様の自由席。予約は必要なく、誰でも座れる。特務機関「NERV」(ネルフ)のマークが通路や側壁に貼られており、窓のブラインドの一部には、劇中に登場する「碇ゲンドウ司令」や「A.T.フィールド」がデザインされたものもある。

3~8号車は「特段変更ありません」と聞いていたが、実際には3号車の通路扉に大きく「3」のデザインロゴが貼られている。もし乗車する機会があったら見逃してはいけない。

■喫煙ルームに意外なキャラが!

なお、3号車の喫煙ルームはタバコを吸わない人も中をのぞいてみることをオススメする。「加持リョウジ」や「赤木リツコ」が一服しているシーンがお目にかかれるからだ。

今回はお披露目とならなかったが、アテンダントも2~3人乗車するという。衣装デザインはおそらく凝りに凝ったものとなるのだろう。

この「500 TYPE EVA」は11月7日に運行を開始する。「こだま」ダイヤで走るので、各駅停車となる。欲をいえば、暴走するエヴァ初号機のごとく、駅で停止せず猛スピードで通過する姿を見てみたい。

※ 10月19日配信記事「独占取材!エヴァ新幹線はこうして生まれた」では、エヴァ新幹線の製作現場を潜入取材。秘蔵のメイキング写真を多数掲載しています