人気アニメ『機動戦士ガンダム』シリーズの生みの親として知られる富野由悠季監督が23日、東京・新宿ピカデリーで『第28回東京国際映画祭』(以下、TIFF)のトークイベントに登壇。ガンダム(モビルスーツ)がなぜ人型なのかに言及し、「人間が宇宙で暮らすようになっても、人間が安心できる相手はやはり人間。だからガンダムは機械的な形にしない。人型になっているんです」と語った。
今年のTIFFでは「ガンダムとその世界」と題して『ガンダム』作品の特集上映を企画。初日のこの日、同劇場では直前まで2014年10月より半年間放送されたテレビシリーズ『ガンダム Gのレコンギスタ』(以下、『Gレコ』)の一部が上映されていた。イベントではメディアアーティストで筑波大学助教の落合陽一氏も登壇し、富野監督と映像文化の未来やテクノロジーの進歩など、多岐にわたる議論を展開した。
『Gレコ』は、富野監督が『∀ガンダム』以来約15年ぶりにテレビシリーズの制作に携わった作品。舞台は『機動戦士ガンダム』などの「宇宙世紀」の延長上の未来「リギルド・センチュリー」で、機動兵器「モビルスーツ」や「ミノフスキー粒子」など宇宙世紀シリーズと共通の技術や設定が登場する。
トーク中、富野監督が「久しぶりに『Gレコ』を作りながら、改めてミノフスキー粒子は秀逸なアイデアだったな。感動した」と自画自賛するひと幕も。ミノフスキー粒子は、通信障害を生じ、レーダーを機能させなくする架空物質のことだが、「極めて、映画的な発想から生まれたんです。科学技術をつかって、地球の裏側にいる人間をやっつけたのではドラマにならない。ミノフスキー粒子があることによって遠隔操作でミサイルをぶっ放すことができなくすることで、人型ロボットで取っ組み合いの格闘戦ができたし、愛憎劇も描くことができた。愛しあうためには手が届く所で抱き合わないといけないという原則があるから、ガンダムの世界は揺るぎない」と語った。
また、「宇宙開発も含めて、地球上の資源が消費される問題はどうなるかというのを、次の世代の人たちに本気で考えてほしいと思ったから、『Gレコ』の世界を作った。10~15歳の子どもたちに種まきをしたかった」と次世代に託す思いも熱く語っていた。
落合氏も「14歳の時に何を観たかで人生決まってしまう。僕は、14歳の頃に『機動戦士Zガンダム』を再放送で観て、『どうやって人類を革新するか』と血気盛んにコンピュータの勉強し始めたんです。アニメを通じて強いメッセージを受け取ることはとても大事なことだと思う」と自身の少年期を振り返っていた。