怒れるユーチューバーたち。
YouTubeが発表したサブクスクリプションサービス「YouTube Red」。気にいった動画をオフライン保存できたり、動画広告が表示されなかったりとユーザーにとってはいいことづくめに思えるサービスです。しかし、コンテンツを作る側であるユーチューバーからは非難の声がたくさん聞こえてきています。
YouTubeは数ヶ月にわたってビデオクリエイターたちと話し合った結果、ユーザーエクスペリエンスを最優先して「YouTube Red」の開始を決定しました。このサービスではユーチューバーが契約しない場合、ビデオは「private(非公開)」に設定され、誰もビデオを視聴することができなくなってしまいます。こうしないと「YouTube Red」を購読しているユーザーより無料ユーザーのほうが多くのコンテンツにアクセスできてしまうためだそうです。
YouTubeの広報は米gizmodoに次のように語っています。
YouTubeのサブスクリプションサービスはクリエイターとユーザーの両方に求められていたものであり、だからこそ「YouTube Red」を開始するのです。すでに大半のパートナーがサービスに契約していて、99%のコンテンツをこれまで通り視聴することができます。契約を更新していないパートナーのビデオは非公開にされますが、彼らが乗り遅れないよう密に連絡をとっていく予定です。
そう言われても気になるのが、その残りの1%の人たち。実際に「YouTube Red」について心配したり怒ったりしているユーチューバーはたくさんいるようです。とあるYouTuberは「Stop YouTube Red」という署名活動を行なっており、すでに8000もの署名が集まっています。ただし、署名活動を率いる人がYouTube Redの仕組みをほんとうに理解しているのかはたしかではありません。
批判が集まっているのはクリエイターとの契約についてだけではありません。YouTubeにお金を払ってビデオを観ないといけない世界に怖さを感じている人もいるようです。ゲーム関連のチャンネルで80万もの登録者がいるJesse Coxさんはこんなツイートをしてます。
So far, this is all we know about YouTube Red. 1. Horrible name. 2. The rich get richer 3. No one knows what it means for other 99% of YT.
— Jesse Cox (@JesseCox) October 22, 2015
(今の時点でYouTube Redについてわかっていること。1、名前がひどい 2、金持ちにもっとお金が入ってくる 3、99%のユーチューバーにとってこれが何を意味するのか誰も知らない)
はっきり言うと1%のユーチューバーにとって「YouTube Red」がどう影響するのかも誰ひとりとして知りません。「PewDiePie」のような超大物ユーチューバーがすでに契約に署名し、「YouTube Red」限定のコンテンツを作っていることはわかっています。とはいえ、公式にYouTubeとパートナー契約を結んでいるわけではないユーチューバーはどうなるのか。これについてはまったくわからないままなのです。広告収入を得る仕組みは変わりませんが、「YouTube Red」がやってくることで数字がどう変化するのかについてユーチューバーの不安は募ります。
Is YouTube red trying to get us out of a job
— Acacia Brinley (@AcaciaBrinley) October 21, 2015
(YouTube Redはわたしたちから職を奪うことになるのかな)
現在ユーチューバーは広告収入の55%を受けとることができます。YouTubeいわく「YouTube Red」ではサブスクリプションによる収益の「大部分」がパートナーに支払われる予定とのこと。具体的な数値はあきらかになっていませんが、視聴時間にもとづいて価格が決定されるそうです。つまり新しいサブスクリプションモデルは、ビデオクリエイターにもう一つの収益源を提供できるのかもしれません。
とはいっても、お金についての疑問やルールの変更について眉をしかめているユーチューバーは多いようです。100万を超える登録者をかかえるArden Roseさんも不満をあらわにしています。
Why does YouTube constantly do things to piss off both their audience and creators?
— Arden Rose (@ardenrose186) October 21, 2015
(YouTubeはどうして定期的にユーザーとクリエイターをムカつかせることをするの?)
YouTubeでお金を稼いでいる人には大きな問題であることは間違いない。じゃあふつうのユーザーにとってはどうなんでしょうか?100%無料だったのがそうではなくなってしまうことは、そこまで大きな問題ではないかもしれません。重要なのはオンラインビデオの世界においてグーグルが絶対的な権力を握っていることだといえるかもしれません。クリエイターがYouTubeのルールを気に入らないのであれば、ビデオと広告収入とはサヨナラする、もしくはVimeoに移行するしかありません。インターネットのプロバイダーなどとはちがって、移行するサービスがほかにもたくさんあるわけでは決してありません。
ふつうのユーザーがYouTubeを視聴するにあたって、どれくらい影響があるのかは未知数です。1月にサービスが開始(広告非表示は来週スタート)されるまで誰にもわかりません。それまではとりあえず何も知らないふりをしてビデオを楽しむとしましょうか...。
Disclosure: Gawker Media is a partner with YouTube Red.
Image by YouTube/Adam Clark Estes
Adam Clark Estes - Gizmodo US [原文]
(Haruka Mukai)