25日、東京国際映画祭「ガンダムとその世界 トークショー」が新宿ピカデリーで行われ、この日上映された『機動戦士ガンダム THE ORIGIN I 青い瞳のキャスバル』の安彦良和総監督とキャスバル・レム・ダイクンの声を演じる田中真弓が登壇した。
シャア・アズナブルの過去に迫った人気コミックを、安彦自ら総監督およびキャラクターデザインを担当してアニメ化した本作。安彦監督は登壇すると、少年時代のシャア、キャスバル役に田中を起用したことについて「キャスティングは藤野(貞義)監督にお任せだったんですけれど、ただ一人だけ、キャスバルの声は田中さんにお願いしたいと言いました」と告白。
だが、当初藤野監督の反応は消極的だったと苦笑い。全国的には田中といえばアニメ「ONE PIECE ワンピース」のルフィの声のイメージが強いことを指摘されたといい、「田中さんはイメージができている」と安彦は明かした。
田中は安彦の話に「藤野さん嫌だったんだ~」と驚きの表情を浮かべながらも、ルフィのイメージが定着し過ぎている自覚があるのか、その後は地元のスーパーのレジで声を聞いた店員から「あなた、ワンピースの方でしょう」と突っ込まれたエピソードなどをにこやかに明かし「地声でやると確かに。藤野さんが嫌がった理由もわからなくもない」とコメント。
安彦曰く、田中に依頼しようと思った理由は、田中と安彦がタッグを組んだ1984年のアニメ「巨神ゴーグ」のムック本が最近出版され、そこでシャアの声でおなじみの池田秀一と田中が対談しているのを読んだのがきっかけだという。それを読んでいる最中に「そうか池田さんは幼いとき田中真弓さんだったんだ」となぜかインスピレーションがわいたといい、「また田中さんにお願いできる」とキャスバル役に決めたという。
田中は本作での仕事について「『巨神ゴーグ』とだぶるような部分も多くて楽しめた」としみじみ。現場はガンダムシリーズに初めて関わる声優も多く、「みなさん、ガンダムという作品に出るという重圧でぴりぴりしていました」とも述懐したが、そんな田中に安彦は「相当頑張った」とにっこり。「ひとつだけ残念だったのは、キャスバルのセリフが思っていたより少なかったこと。録りながらこんなに少なかったのかって。そこだけを申し訳なく思っています」と話していた。(取材・文:名鹿祥史)