氷に覆われた海に生命の発生可能な条件が備わっているとされる土星の衛星エンケラドスの岩石は、地球の岩石と異なり隕石(いんせき)に近い組成であることを、東京大と海洋研究開発機構などの研究チームが明らかにし、27日付の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに発表した。原始的な微生物が「食料」にする水素が発生しやすい環境と考えられるという。
エンケラドスは直径約500キロで、表面は氷で覆われている。米欧の探査機カッシーニが2009年、南半球の氷の下に海が存在し、氷の粒や塩分を含む蒸気(プルーム)が噴き出す様子を確認した。米航空宇宙局(NASA)はカッシーニをプルームに突入させ、成分を分析する。
東大大学院の関根康人准教授らは、プルームに含まれる微粒子ナノシリカの生成を実験で再現。今年3月、エンケラドスの海に90度以上の熱水が発生していることを明らかにした。
研究チームは今回、別の実験で、熱水と反応しているエンケラドス内部の岩石の組成を推定。過去に高熱で溶けたことがある地球の岩石と異なり、隕石や小惑星のような組成でないと、ナノシリカが生成されないことを突き止めた。
こうした岩石は鉄を多く含み、水との反応で水素が大量に発生する。水素は原始的な微生物がエネルギー源に利用しており、関根准教授は「生命の存在可能性としてはプラスになる」と話している。