衰退する日本、崖っぷちな日本、弱者に厳しい日本、幸福度が低い日本、将来に希望のない日本……なんとなく、ネガティブな情報が蔓延している日本。
実際に少子高齢化問題や社会保障問題、雇用の問題、高い自殺率など、問題は山積しています。
世界一有名な町工場のおじさん・植松努さんの「いじめ論」に考えさせられる
そういった世の中の空気を察してか、子どもたちから日本の現状について聞かれた経験はありませんか?
彼らが日本の問題について意識することは良いことだと思いながらも、細かく説明し出すと、専門用語が増えたりしてなかなか納得させる教え方ができません。かといってアバウトな返答もできないテーマであります。
説明が簡単で子どもたちも理解しやすい説明方法はないものかと、筆者も悩んでいました。そこで見つけたのがある書籍。それは、ファイナンシャルプランナー・江上治さんの著書『あなたがもし残酷な100人の村の村民だと知ったら』です。
100までの数で分かる、日本のリアル
同書がわかりやすいのは、この国を「仮に100人の村だったら」と仮定している点。1億2700万人がいる国を、100人の村に見立てているのです。
例えば、男女比を100人の村で考えると、「49人が男性で51人が女性」となります。そのうち子どもが13人で、働き手が61人で、老人が26人。100人というボリュームだと何となく自分の知り合いで想像することができるので、わかりやすいですよね。
そして、わかりやすいがために、子どもの数が思っていたよりも少なく、また、同時に老人の数が多いことに気付かされ驚きます。ただこれは今の日本の数字。
35年後にはもっとこの数字が極端になります。
その頃の日本は、子どもの数が10人に減り、働き手は51人に減り、老人は39人に増えると予想されているのです。
まさしく「少子高齢化」。子どもの数が13人から10人に、働き手が61人から51人に減るのです。一方で老人の数は13人も増えるのです。わかりやすい(と同時に不安!!)。
見えてくるのは、生活していくことの難しさ
現在の雇用を100人の村で見てみるといかがでしょう。
いま村で雇われて働いているのは41人。そのうち26人が正社員で、15人が非正社員となっています。
正社員が1時間あたりにもらえるお金は1937円で、非正社員が1229円。両者には大きな差がありますね。
年収200万円以下のワーキングプアは、村人のうち9人が該当。これは働いている人の4分の1の数となります。
働く女性にとって“残酷”なこの村の実態
江上さんは「働く女性にとって、この村での生活はとても残酷なことがわかります」と指摘。
というのも、女性の正社員の一番多い年収帯は200万円~299万円。そして、非正規社員の場合は100万円未満となってしまいます。男性の半分ほどの数字となっているのです。
女性の収入の低さはそのままダイレクトに「母子家庭の貧しさ」につながっています。日本の母子家庭での子どもの貧困率の高さが話題となっていますが、この村で例えると、18歳以下の子どもの約16%が貧困層に分類されています。
他にも数字を見ていきましょう。収入の低さからこの村の半分の50人が「生活がきつい」と嘆いており、まったく貯金のできない家は村の3分の1に。この村では自殺の数が多く、世界でも5番目の多さに。
31秒に1人が生まれ、25秒に1人が死亡。48秒に1組が結婚し、2分16秒に1組が離婚しています。
介護が必要な65歳以上は増える一方で、その介護をするのが夫や妻、子どもですが、そのうち3分の2が女性となっています。
この村の幸福度は158ある村のうち48番目なのです。
驚きの結果なのですが、これが現実なのです。江上さんも、「すでにあなたの子どもたちは、生まれたときから借金まみれで、学校に行くお金もなくて、仕事に就いても給料が安くて、結婚もできない、将来の年金も期待できず、それで老親の介護に追われる……。これらはすでに決定している事実です」と語ります。
目を背けたくなるほど苦しい現実です。しかし、だからといってこのテーマを直視しないことの方が問題です。
もし、お子さんや子どもたちがこのようなテーマに関心を持ったら、ぜひ、江上さんのようなわかりやすい例えで、問題点を教えてあげてはいかがでしょうか。
そして、はやくこれらの問題が解決するよう、親も子どもも一緒になって考えたいものです。