ついに公開となった『ガールズ&パンツァー 劇場版』。製作が発表されてから約2年半、ファンは待ちに待ってのものだが、作品の舞台の“聖地”茨城県・大洗町で15日に開かれた「大洗あんこう祭」には、その新作への期待の高さからか2013、14年の約10万人を超える約11万人が詰めかけ、過去最高の来訪者を数えた。
そんな今年の「大洗あんこう祭」の熱気や大洗町について、初めて大洗町を訪れたという30代男性に尋ねた。
「大洗マリンタワー前での開会宣言から参加していたのですが、雨が降っている中でも、会場中、身動きがとれないくらい人だらけで、すごい熱気でした。そこで大洗への移住している人は? ということを壇上からアンケートがあったんです。そうしたら、会場の2~3人が手を挙げてて、作品が好きで実際に移り住んだ人がいるのはビックリでしたね。さらに、茨城県議会議員の人(田山東湖氏)も家を建てると補助金が出るという話を始めて、『お嫁さんを連れて移住してくれるとまた新しい展開が期待できる。“ガルパン王国”を作ってもいいと思います』と発言していて、アニメが県をも動かそうとしているという勢いを感じましたよ」
正午には『ガルパン』トークショーも開催。応援大使に“黒のカリスマ”で知られるプロレスラーの蝶野正洋が就任したことが発表され、場内は「マジか!?」(同)など、どよめきの声なども上がり大盛り上がりだったという。
「トークショー後には、歩行者天国になっていた曲がり松商店街のあたりに人がなだれ込んでました。42台の痛車コンテストとか、TV版第4話で戦車が突っ込んで有名になった旅館の肴屋本店さんのあたりは、人でごった返してましたよ。その先まで行くと歩行者天国が終わって、それまで多かった人が一気にまばらな感じで、『ここまでか』と言いながら回れ右して戻っていく人が多かったです。ただ、その先にもキャラクターのパネルが置いてあるお店があったので、試しに足を伸ばしてみました。そうしたら、丸五水産さんやウスヤ精肉店さんと、名物店に行く古参のファンの方が多くて。歩行者天国部分より先に行くか行かないかで、なんとなく盛り上がってるから観光しにきてみたというのと、好きで大洗に通っているという“境界線”みたいな印象を受けました」(同)
そんな活況を呈していた「あんこう祭」のときの大洗町だが、平日はどうなのだろうか。別の30代男性に話を聞いてみる。
「初めて行った時に驚いたのが、キャラクターのパネルが置いてあるお店が米屋さんとか洋服店、時計屋さんなど普通の旅行なら入らないような場所でも、コアなファンの方たちは店に入っていって、店主と親しげに話こんだりしていたことです。そのパネルが置いてあるお店ごとにファンたちと店主との間で何かしらの歴史を感じさせるくらい距離が近い。よく作品に出演している声優さんが舞台挨拶とかで『大洗は温かい』と言っていたのは、そうことなのかとストンと落ちてくる感じでした」
と、どうやら街の人とファンの距離が近くて話に花が咲く光景も見られるよう。ほかにもこんなことも。
「聞いた話なのですが大洗の旅館ごとに好きなキャラクターの同志が集まる傾向にあるらしくて“派閥”みたいなものが形成されているそうなんです。それで、その旅館に泊まったファンが何か自主的なイベントを開くと、別の旅館の“派閥”のファンは『負けてられるか!』という感じで、別の自主イベントを開くという、一種のお祭り状態で、街の盛り上げに一役買ったということもあったみたいです。人気キャラの誕生日には平日でも小規模な同人誌即売会のような列ができていたともいいます。逆に、大洗町に住んでいる人も盛り上がってるみたいで、13年に大洗町消防団第5分団が『茨城県消防ポンプ競技大会県央地区大会』で優勝した際には、優勝パレードなるものを開いたそうなんですが、そのパレードの光景は『ガルパン』のTVアニメ版12話最終シーンを似せたような感じにして、アナウンスは園みどり子役などの声を務めている井澤詩織さんがこのパレード用の録音の音声を吹き込んでそれを流していたという感じで、沿道からは町人とファンが手を振ったりと、とにかくすごかったみたいですよ」(同)
もう、『ガルパン』においては2.5次元の町といってもおかしくないほどの盛り上がっている大洗町。とはいえ、熱狂的なファンがいるということは、ジャニーズやアイドルのファンにもよくある行き過ぎた、いわゆる“やらかし”を起こしてしまうファンもごくたまにいるのだとか。そんな心ない一部のファンの悪評が、大洗町の方々をはじめ作品を愛しているファンのイメージとなってしまっては、悲しむ人が大勢出てしまうことになるだろう。今後もマナーの良い聖地巡礼を期待したいところだ。