2015年11月10日,Bethesda Softworks(以下,Bethesda)のオープンワールドRPG「Fallout 4」(PC / PlayStation 4 / Xbox One)が世界市場で発売となった。英語PC版であればもう購入できるので,読者の中にも,レイダーと戦いを繰り広げたり,クラフトに精を出したりし始めている人もいるのではないだろうか。
12月17日には日本語版が発売となり,Steamで日本語の無償配信も始まるので,それを楽しみに待っている人も多いと思う。
そんなFallout 4は,「Fallout 3」(PC / PlayStation 3 / Xbox 360)や「The Elder Scrolls V: Skyrim」(PC / PlayStation 3 / Xbox 360)でもお馴染みのゲームエンジンである「Creation Engine」の新型,DirectX 11(Direct3D 11)対応版を採用している。それもあってかどうか,Fallout 4の推奨スペックは,GPUが「GeForce GTX 780」もしくは「Radeon R9 290X」以上,CPUが「Core i7-4790」と,なかなか厳しい。
■現行製品に,1〜2世代前の主要製品も加えてテスト。垂直同期設定にはコツあり
さて,28種の内訳だが,具体的には以下のとおり用意した。GeForceはGPUコアアーキテクチャにして3世代分,Radeonはリフレッシュ(リブランド,リネームともいう)品が多いので,「Graphics Core Next」(以下,GCN)アーキテクチャで3世代分,それぞれエントリーミドルクラス以上のGPUを用意している。
・第2世代Maxwell:「GeForce GTX TITAN X」「GeForce GTX 980 Ti」「GeForce GTX 980」「GeForce GTX 970」「GeForce GTX 960」「GeForce GTX 950」
以下,GPU名の「GeForce」「Radeon」は省略するが,今回,R9 Fury搭載カードは,ASUSTeK Computerから貸し出しを受けた「STRIX-R9FURY-DC3-4G-GAMING」を用いる。また,R9 300シリーズのグラフィックスカードは,すべてPowerColorおよび玄人志向ブランドのもので揃え,いずれも両ブランドの販売代理店であるCFD販売に貸し出しを受けた。それ以外はGPUメーカーから貸し出しを受けたものか,4Gamerで独自に用意したものかだ。
なお,これは言うまでもないことではあるが,カードメーカー各社の製品には,工場出荷時点で動作クロックが引き上げられたカードがいくつかある。それはMSI製のオーバークロックツール「Afterburner」(Version 4.1.1)でリファレンスレベルにまで動作クロックを下げているが,最近のグラフィックスカードは冷却能力の違いによって高い動作クロックで動作する時間が変わるため,入手したカードによって,スコアは微妙に変わることとなる。「すべてリファレンスカードで揃える」のが理想であるけれども,物理的に不可能であるため,この点はご了承を。
また,GTX TITAN Black搭載製品である「GV-NTITANZD5-12GD-B」だけは,Afterburnerを用いても,コアクロックはリファレンスの889MHzから若干高い901MHzまでしか下げられなかったため,以下は「GTX TITAN Black@901MHz」(※グラフ中は「GTXTB@901MHz)と表記する。この点もあらかじめお断りしておきたい。
そのほかテスト環境は表1のとおりとなる。
テストに用いたグラフィックスドライバは,GeForceシリーズが「GeForce 358.91 Driver」,Radeonシリーズは,R9 380Xのみ,貸し出しスケジュールの都合で,GPUレビュー用としてAMDから全世界のレビュワーに対して配布された「15.201.1151.1010-151110a-296225E」,それ以外では「Catalyst 15.11.1 Beta」を用いた。
11月24日リリースの「Radeon Software」を使わないのはなぜか,という指摘はもっともだが,これは,
1.GeForce 358.91 DriverのリリースをもってGeForceのテストを,Catalyst 15.11.1 BetaのリリースをもってRadeonのテストを開始した
という理由による。
というわけでテスト方法だが,テストシーンには,描画負荷が比較的大きいと判断できた「Corvega Assembly Plant」(自動車組み立て工場)を選択。そのなかで決まったルートを1分間動き,その平均フレームレートを「Fraps」(Version 3.5.99)から計測している。
テストに用いたFallout 4のバージョンは1.1.30.0.0だが,現地時間11月23日に,「Beta Update 1.2.33」がリリースされた。この1.2.33ではメモリ周りの最適化が入っているため,全体的なフレームレートの改善を期待できるはずだが,本アップデートは文字どおりβ版であり,Steamからプレイヤーがβプログラムへの参加を希望しない限り適用されないため,今回のテストで,同アップデートの適用は見送っている。
ところで,テストにあたって垂直同期は無効にする必要があるのだが,Fallout 4ではその設定が用意されていない。
設定の話が出たので続けると,Fallout 4には「Ultra」「High」「Medium」「Low」と,4つのグラフィックス設定プリセットが用意されている。そのなかから,今回は描画負荷が最も高いUltraと比較的低めのMediumを使いたい。
そのアンチエイリアシングだが,Fallout 4では「FXAA」(Fast Approximate Anti-Aliasing)と「TAA」(Temporal Anti-Aliasing)しかサポートしていない。今回はUltra設定で適用されるTAAを採用したのだが,一応,GTX 980 TiとR9 Fury Xで画面を見比べておこう。
試してみたところ,UltraとMediumでスコア差があまり大きくなかったこともあり,今回,Medium設定ではアンチエイリアシングと異方性フィルタリングの設定をともに無効とした。おそらくは,描画負荷が高いことを重視して屋内シーンを選択した結果,「Godrays Quality」の設定が意味をなさなかったこと,遠距離の描画設定を調整する「View Distance」の効果が薄らいだことの2つが理由だと思われる。今後,レギュレーションに採用するときは,このあたりを考慮する必要があるだろう。
解像度は,1920×1080ドットと2560×1440ドット,3840×2160ドットを選択。ウルトラハイエンドからエントリーミドルクラスまでGPUが揃っているので,いろいろ試してみようというわけだ。
■Ultra設定の1920×1080ドットで「快適にプレイできる」GPUはGTX 970もしくはR9 390X以上
いろいろ前置きが長くなったが,テスト結果を見ていこう。以下,グラフのバーは,GeForceがGPUコア,RadeonがGCN世代となるので注意してほしい。
グラフ3は,Ultra設定における3840×2160ドット時の結果をまとめたものだ。平均フレームレートではR9 Fury XがGTX TITAN Xを上回り,R9 FuryもGTX 980 Tiに迫り,R9 Nanoもそれに次ぐスコアを記録した。全体的に「Fiji」コアのR9 Furyシリーズが善戦していると評していいだろう。これは,描画負荷が極めて高い状況において,Fijiがオンパッケージで搭載する「High Bandwidth Memory」(以下,HBM)の効果が如何なく発揮されたという理解でいいはずだ。
「あれ,GTX TITAN ZとR9 295X2がトップ争いじゃないの?」と思うかもしれないが,グラフを見てもらうと分かるとおり,両製品は中位に沈んだ。SLIもCrossFireも機能していないわけである。GTX TITAN ZのスコアがGTX TITANとほぼ同じで,R9 295X2のスコアがR9 290Xとほぼ同じあたりは,ある意味で見事だ。
これが,解像度を2560×1440ドットに落とすと,一気に「快適なプレイの現実味」が増してくる。グラフ4がその結果だが,GeForceとRadeonの両ツートップがいずれも最小フレームレート60fpsを超えてきているからだ。
多くの4Gamer読者が気になるであろう,Ultra設定の1920×1080ドット条件の結果がグラフ5だ。ここでは,グラフ4で及第点のスコアを示していたGPUがそのままスライドして合格ラインを突破してきている。
グラフィックス設定をMediumに落としたらどうなるかだが,Mediumであっても,3840×2160ドットは現実的な選択肢でないということが,グラフ6を見るとよく分かる。
解像度を2560×1440ドットに落としてみると,Ultra設定とは異なり,GTX 980とR9 Nano,R9 390Xの3製品が「最小フレームレート60fpsクラブ」の仲間入りを果たした(グラフ7)。
最後に,1920×1080ドットの結果がグラフ8となる。
テスト中におけるシステム全体の消費電力も取得したので,結果をグラフ8にまとめてみた。
■CPUは2コア4スレッド対応で十分? 同一クロックならそれ以上でスコア差はない
本稿の主題はFallout 4を前にしたGPU性能の比較だが,CPUのコア数がフレームレートにどういう影響を及ぼすかも気になるところだ。ここでは,GPUをGTX 980 Tiで固定のうえ,Core i7-6700Kのコア数をUEFIから4コア,2コアと変化させ,さらに「Intel Hyper-Threading Technology」の有効/無効も切り替えることにより,4コア8スレッド(4C8T,以下同じように表記),4C4T,2C4T,2C2Tの状況を作り出している。実のところ,1コアもテストしてみたのだが,Fallout 4を起動するとフリーズする現象に陥ったため,1コアでのテストは割愛した。
テスト方法自体はGPU検証時と同じだが,描画負荷が大きすぎるとCPU性能の違いが表れづらくなることから,ここではMedium設定の2560×1440ドットと1920×1080ドットでのみ取り上げる。
■やはり“重い”Fallout 4。今後のことを考えるならGTX 970&R9 390X以上がベターか
テストを通して,やはりFallout 4はかなり“重い”タイトルだというのが,よく分かった。現状ではデュアルGPU構成が正常に機能せず,3840×2160ドット解像度は現実的な選択肢とならないこともあって,より低い解像度について話さざるを得ないわけだが,たとえばUltra設定の1920×1080ドットで,MODの導入まで想定するという条件では,現状のハイクラス製品を選択するほかなさそうだ。「PCならではのグラフィックス」を実現し,かつ,将来にわたっての快適性も確保したいなら,最低でもGTX 970もしくはR9 390X以上が必要だろう。
ただ,とりあえずバニラ(Vanilla,何もMODを導入していない状態のこと)で快適に,というのであれば,GTX 780 TiやR9 290などといった,一世代前のハイエンドGPUが選択肢になってくる。「とにかく快適」にこだわらず,一定レベルの快適性があればいいというのであれば,GTX 960やGTX 770,R9 380やR9 285といったあたりまで大丈夫そうだ。
全体の評価としては,GeForceが優勢ながら,Radeonも上位モデルやGCN 1.2世代のモデルは健闘している,といったところ。PC日本語版の登場を待っている人や,目下プレイ中でグラフィックスカードの買い換えを考えている人は,ぜひ参考にしてほしいと思う。
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