今年8月、危険化学物質の倉庫での火災により、キノコ雲が上がるほどの大爆発を起こしたことが記憶に新しい中国・天津市。その爆発で400人以上の死傷者が出た同市において、世界最大のクローン工場が建設されることが決定した。肉牛などをクローンで創り出すということだが、科学界をはじめ多くの人が「そんな肉を食べるのか」と懸念しているという。
天津経済技術開発区管理委員会と、バイオテクノロジー企業・博雅控股集団の傘下・英科博雅基因科技有限公司(有限公司は日本における株式会社)とが戦略的連携協定を結び、決定したクローン工場建設。英科博雅基因科技は、今年末までに世界各国の空港や警察などの特殊任務用のクローン犬を、550頭ほど提供した実績を持っている。その同社が北京大学医学研究所、天津国際生物医薬連合研究院、韓国秀岩生命工学研究院と協力し、天津市北部の港湾地区に工場の建設を目指す。
2億人民元(約38億円)を投じて建設される工場では、優良使役犬(職業犬)、トップクラスの競走馬、肉牛、人類を除く霊長類といったクローン事業を展開。また、クローン実験室や遺伝子バンクなども設けられるようだ。
科学の進歩には驚かされるが、国内外問わず、「クローンで作られた肉など食べたくない」「食べる人いるのか」といった声が上がっている。
「このほど進められているクローン工場建設だが、中国はもとより、協力している秀岩生命工学研究員に問題があります。ここの所長は黄禹錫(ファン・ウソク)で、93年、韓国で初めて牛の人工授精に成功し、99年には韓国初となるクローン牛の誕生、さらに2005年、世界で初めて犬のクローンを成功させるなど、優れた研究者でした。しかし、同年にヒト胚性幹細胞の捏造が発覚したことにより、信用や名誉、すべてを失ってしまった。結果、それまで発表してきたクローン牛も捏造とわかり、研究者も含め、黄に耳を貸す者は激減しました。08年、黄のチームが『絶滅危惧種であるチベタン・マスティフ(獅子犬とも)のクローニングに成功した』というニュースが報じられたが、確かめる気にもなれないという声が多数ありました。クローン工場を作ったとしても相手にする者は少ないでしょうね」(科学に詳しい人物)
黄氏が率いる韓国秀岩生命工学研究院のクローン技術により進められる事業展開。手始めに、肉牛や乳牛のクローンを年10万頭ほど作製する見通しで、ゆくゆくは年100万頭まで規模を拡大する計画だという。いまだにクローン動物の多くが奇形や病気で死んでゆくといわれている今、食肉問題だけでなく、クローン動物における倫理問題もあわせて注目していきたい。
※画像は、Thinkstockより