「今、日本の映画産業に何が起きているのか?」と題したセミナーが27日に文京学院大学で行われ、同大学経営学部の教授で、株式会社白組のコンテンツ・スーパーバイザーを務める公野勉氏が現在の映画・アニメをめぐる状況を解説した。
今年は『ベイマックス』(昨年12月公開)や『ジュラシック・ワールド』(今年8月公開)が興行収入90億円を超える大ヒットを記録。さらに『ラブライブ!The School Idol Movie』が想定外の大ヒットを飛ばすなど、映画界、アニメ界をめぐる好調なニュースは多かった。しかしその反面、今年はミニシアターブームをけん引したシネマライズの閉館が発表されたほか、『リング』シリーズなどを手がけた制作会社オズが破産手続きを受けたり、「サムライチャンプルー」などで知られるアニメ制作会社のマングローブが自己破産手続きに入ったりと、波乱の1年でもあった。
『鮫肌男と桃尻女』『レディ・ジョーカー』といった劇映画のプロデューサー経験を持つだけでなく、アニメ業界の現状にも詳しい公野教授は、アニメ業界をめぐる問題点について「制作会社が1番リスクの高い流通システム」「オンエア期間の短期化による1クール(3か月)作品の増加」「制作本数の増加に対応できる大手制作会社が優先して受託」「定額で受託する会社の増加。結果的にスタッフ数も増加し悪循環」「声優のギャラの増大による映像制作費の圧縮」「ビデオソフトの売り上げ減」「原作者・クリエーター・声優の権利増大」といった例を挙げて、アニメ業界の現状を解説。
そんな状況の中で公野教授が危惧するのは「アニメ作品のオワコン化」だという。放送中にはどんなに話題を集めたアニメも、制作本数が多いために、放送終了後には視聴者の関心は次のアニメに移ってしまうこともしばしばだ。それによって固定のファンがつかず、マーケットが組成されない現状があるという。
公野教授は、その要因として「作品内容よりも声優人気に依存するケースが増えたため、効果的な集客はオンエア期間のみになってしまう傾向がある」と指摘する。さらに公野教授は、実際に放送されていたアニメ作品のツイッター投稿数を例にとり、「放送終了後の翌々週には、作品タイトルを含めたツイッター投稿数は半減。動きのなくなった作品の余韻に浸るユーザーは少ない」と説明。「原作作品であれば原作人気でブームを保温できるものの、オリジナル作品の場合は放送終了と同時に何か手を打たないとオワコン化する」と付け加えた。(取材・文:壬生智裕)