11月22日に投開票された大阪府知事・市長のダブル選挙で、大阪維新の会公認候補が二勝した。ほとんどの在阪マスコミは気がつかなかったようだが、先週金曜日(11月27日)の夕刻、自民党大阪府支部連合会(自民党大阪府連)は、大阪市内の府連事務所でマスコミを完全にシャットアウトするかたちで「ダブル選挙」の反省会を開いた。
その内容についてはほとんど伝わってきていないが、関係者によれば「まさにお通夜のようで、前向きな話は何も出なかった」(自民党大阪府連関係者)という。それも当然といえば、当然といえよう。その日、議題となったダブル選挙に関していえば、まさに大阪維新の会の圧勝という結果に終わったからだ。
そもそも自民党サイドは、このダブル選挙の目標を「一勝一敗」、つまり「大阪府知事選は落としても、大阪市長選は絶対に獲る」というところに置いていた。これに対して大阪維新の会は、「二勝」を絶対的な目標とし、「もし『一勝一敗』なら、大阪維新の会は消滅する」(維新関係者)というぐらいの悲壮な覚悟で臨んでいた。そして選挙戦がスタートする前の大方の予想は、「一勝一敗」に集約されていたのが実情だ。
正直にいって維新の大阪市長候補、吉村洋文氏はまったくの無名で、その存在はほとんど市民の間に浸透していなかったのが実情だ。
これに対して自民党サイドの候補、柳本顕氏は、大阪都構想をめぐる住民投票で名前と顔を売り、「反橋下」のシンボルとでもいうべき存在で、選挙戦を圧倒的に有利に運ぶものと見られていた。
ところが実際に選挙戦に突入するや、吉村候補が柳本候補を一気に追い上げ、選挙戦終盤に入る前の段階で追い抜いていったのだ。
それにしてもなぜ、こんなことになってしまったのだろうか。
●自民党支持者たちもドン引き
現地で取材をしてみるとそれは明らかなのだが、その最大の理由は、共産党が柳本候補の支援に回ったためだ。これはあまり指摘されていないことだが、柳本氏は自民党も含め、どの政党からも公認を得ていない。つまり、立場上はあくまでも「無所属」なのだ。
「これは、共産党や民主党の支援を期待したため」(自民党大阪府連関係者)
しかし、このことが結果的に完全に裏目に出たといっていいだろう。
筆者は実際に選挙戦の最中、こんな光景を目にした。
柳本候補が選挙演説をしていた時のことだ。明らかに共産党支援者とおぼしき一団が、手に手にプラカードを持って応援に駆けつけ、柳本候補に盛んに声援を送っていた。そのプラカードに書かれていた文言は、「さよなら維新」。ここまではわかる。しかしそのプラカードには、あの独特の文体で書かれた「アベ政治を許さない」というステッカーまで貼られていたのだ。こうしたことが積み重なって、柳本候補から自民党支持者が離れていったのだ。
「加えて『シールズ関西』なる学生集団までが、柳本候補の応援に動いていた。あの人たちは、反安倍政権、反自民でしょう。これには、古くからの自民党支持者たちもドン引きだった」(自民党幹部)
結果、自民党支持者のかなりの部分が、それこそ雪崩を打って吉村候補に投票したのだ。いずれにしてもこの選挙結果は、国政にも大きな影響を及ぼすことになるはずだ。
「共産党が提唱する『国民連合政府』構想に乗って、選挙協力にまで踏み込んだら大変なことになる。今回のダブル選挙で、そのことがはっきりした」(民主党幹部)
どうやら来年度の参院選をめぐる民主党と共産党の選挙協力は、幻となりそうだ。
(文=須田慎一郎/ジャーナリスト)