30年ぶりのTVシリーズルパン三世、第9話「殺し屋たちの鎮魂歌」はファンが待ちに待った五エ門回! 登場は第2話以来だから、実に2カ月以上出番がなかった居合の達人、石川五エ門をメインに据えたエピソードだ。
殺されたのは全員、イタリアの若手政治家レオポルド・ファーゴに雇われた殺し屋だった。ファーゴの依頼は、西アフリカで独裁政治を行うデケレ大統領を暗殺すること。五エ門もファーゴに雇われた殺し屋の一味である。ルパンたちと一緒にいないと思ったら、こんな仕事をしていたのね。そして、殺し屋たちの中にはライフルを構える無口なショートカットの少女、ベラドンナがいた。
砂漠でデケレ大統領一行を待ち伏せする殺し屋軍団。五エ門は自爆装置を着用している幸薄いベラドンナを守る約束をする。
「言うだけなら簡単ね……」とクールに振舞うベラドンナの手を取り、おもむろに自分の指を絡める五エ門。
「指切りと言う。日本では……契りを交わす時、こうする」
なにそれ! 五エ門! 女殺し!
戦いが始まると、殺し屋たちはデケレを警護する伝説のスナイパー、ゾラの手によって一人一人殺されていくが、五エ門は超人的な戦闘力でゾラが放った銃弾を叩っ斬り、ついでにデケレも真っ二つ! 暗殺成功!
怒りに燃える五エ門が、夕日をバックにファーゴの屋敷に乗り込む。薄絹をまとい、般若の面をつけた桃太郎侍スタイルの五エ門(ちゃんとBGMに鼓の音が入る)。
ファーゴの邸宅の警備をあっという間に突破する五エ門。ファーゴはベラドンナの胸に埋め込まれた自爆装置を盾に逃げようとするが、ベラドンナの手によって射殺される。さらに自爆しようとするベラドンナだが、五エ門がそれを止める。
「指切りをした。お主を守る。某(それがし)の命に代えても」
なんと五エ門は斬鉄剣でベラドンナの胸を一突き! 遠くで爆発が起こる。はたしてベラドンナの命は……。
今回は出番がほとんどなかったルパンと次元だが、ラストでは五エ門と行動をともにしていた。3人の前に現れた少年が、「無愛想な姉ちゃん」から日本風の約束「指切り」を学んだと話す。思わず腰を浮かす五エ門を次元が制して一言。
「人違いだよ」
うーん、渋い! そして次元、人生経験ありすぎ。
ラストでは斬鉄剣をひと振りするだけで、迫ってきたパトカー群のみならず、銭形警部の衣服まで真っ二つにし、さらに数十メートルも跳躍してみせた。総監督を務める友永和秀はインタビューで「五エ門が斬鉄剣で車を真っ二つにするようなハチャメチャな感じは抑えめにしています」と語っていたが、それにしても今回の五エ門は圧倒的に無敵だった。イタリア人が抱く“SAMURAI”の神秘的なイメージを限りなく膨らませたのだろうか?(今シリーズはイタリアで先行放送されている)
同時に、生臭く殺人シーンを描いているのも今回の特徴だ。登場人物たちは血を噴き上げながら死んでいき、五エ門も独裁者デケレを直接斬り殺す。五エ門が人を斬り殺す描写は、案外珍しい。また、金で雇われてドライに殺しを行うところも『ルパン三世』らしさだ。ルパンも五エ門も義賊じゃないからね。
今回のヒロインはショートカットの暗殺マシーン少女・ベラドンナ。ベラドンナとはイタリア語で「美しい淑女」という意味だが、可憐な花をつける猛毒を持った植物の名前としても知られている。
デケレ暗殺のときは胸も小さく、いかにも少女然としたたたずまいだったが、その後、五エ門と再会したときには胸も谷間ができるほど成長しており、「ベラドンナ可愛い!」という声のほか、「あのロリが育っちゃった…」との落胆の声も見られた。
今回の五エ門も、ベラドンナにある意味メロメロだった。そして非常に女運がない。そういう意味では、非常に五エ門のテンプレートに忠実な物語だったとも言える。なかなか五エ門が登場せずにじれていた五エ門ファンたちも、きっと満足したことだろう。脚本は6話「満月が過ぎるまで」を担当した稲本達郎。そういえば6話にも少女の頃に金持ちに拾われたヒロイン・エレナが登場していた。
さて、今夜放送の第10話は、不二子と破天荒な富豪令嬢・レベッカが正面衝突! ルパンの争奪戦を繰り広げる、その名も「恋煩いのブタ」。すごいタイトルだ。チャンネルは決まったぜ。