12月1日の「『現代用語の基礎知識』選 2016ユーキャン新語・流行語大賞」でトップテンの一つに「アベ政治は許さない」が選ばれた。世間から冷たい意見も出るなか、当の安倍晋三首相は、11月29日に行なわれた自由民主党の結党60年式典で「(民主党から政権を奪還して)この3年間、みんなで頑張ってマイナスからプラスへ、諦めから希望へ、日本を大きく変えることができた」と発言。これに対して、非難の声が鳴り止まない。
GDPマイナス成長 海外メディアは失敗扱いこの式典の演説で安倍首相は、「希望を生み出す強い経済」「夢をつむぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」の「新・三本の矢」の実現を目的としたプロジェクト「1億総活躍社会」について、「成長と分配の好循環を生み出す新たな経済社会システム」と自信を示した。9月24日にも、会見で「GDP(国内総生産)は600兆円を達成する(2014年度は約490兆円)」と大きな目標を掲げたばかりだ。
しかし、11月16日に発表されたGDPが4〜6月期で0.7%減、そして7〜9月期は0.8%減と二期連続のマイナス成長という結果に。それでもなお、29日に安倍首相は「マイナスからプラスへ〜」と高らかにスピーチを行なったのである。
海外メディアの目は厳しい。アメリカの新聞紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」は「(安倍首相が政権をもって)2度目のリセッション(景気後退)」とみなし、ロイター通信はサクソバンクのCIO(最高運用責任者)であるスティーン・ヤコブセンの「アベノミクスは失敗に終わったと思う」というコメントを引用。ニューヨーク・タイムズは日本の人口が減少傾向であることに触れて「円の価値はますます下落し、日銀はさらに手詰まりに陥る」と語っている。
国の成長を測る重要数字や今後のマイナス部分を直視している分、国の台所を預かる内閣より、海外メディアのほうが冷静な分析をしているように見える。
多くの国民に景気が良くなった実感が湧かないなか、「日本を変えることができた」と発言したのは、党全体の士気を上げる意味もあったかもしれないが、それにしても時期尚早だったのかもしれない。まるで現実を直視していないような発言に対し、ネット上では「GDPはプラスからマイナス」「格差社会まっしぐらなのに脳天気」「日経平均株価吊り上げたところで実体経済は良くなりません」と非難の連続だ。
前述の「1億総活躍社会」についても「物価高騰・消費税増税で誰も活躍できない社会になるだろう」「アベは、旗だけ振るって丸投げして、後は知らん顔」と暗い意見が目立つ。
「TPPや安全保障関連法など様々な問題に取り組んでいますが、国民から"説明不足"の指摘を度々受けています。そこにGDPのマイナス成長というニュースが飛び込みました。"なんだかよく分からないけど国がマイナスの方向に行っているかも"という先行きの不透明感が怒りを増長しているのかもしれません」(報道関係者)
30日(日本時間12月1日)には、第21回締約国会議(COP21)の首脳級会合で、途上国に対する支援金を、2020年までに年間1兆円から1兆3000億円に増額する意向を示した。10月にも、約1000億円をシリアの難民支援に拠出すると表明しており、一連の"バラマキ外交"に対してもメディアやネットユーザーから反感を買っている。
安倍首相が不評を買う理由の一つは、ラチがあかないとき、聞く耳を持たずに押し切る印象があるからかもしれない。状況を顧みない言動も、トンチンカンな印象を与えている。いつも上から目線で発言しないで、たまにはテレビやネットなど下界に降りて、国民と徹夜で舌戦を繰り広げてみてはいかがだろうか。国の現状や自分のやるべきことが、よりハッキリ見えてくるかもしれない。
蒼木学(あおきまなぶ) フリーの取材記者。エンタメ・芸能から教育・社会問題まで幅広く取材を行う。興味のあるトピックは人工知能、近現代史。