大阪市内で4ブランドの焼肉店を展開する「萬野屋(まんのや)」。この店がマイナンバーをくじに見立て、12ケタの数字に当選番号があれば、焼肉を無料サービスするとぶち上げたのは10月29日のこと。
ところがその後、内閣官房から法令違反の疑いがあると「待った」がかかり、企画はあえなくボツになってしまった。
さぞかし意気消沈しているのかと思いきや、なんと、内閣官房の苦情を逆手にとり、リベンジキャンペーンに打って出たのだ。その名も「マイナンバーおこと割(お断り)」。萬野屋の菅野功専務が言う。
「マイナンバーの利用がダメというなら、マイナンバーは断固お断りして、免許証やクレジットカードなど、お客さまの身の周りにあるカードの番号をくじに利用することにしました」
くじの内容は前回同様、「1129(イイニク)」、「4129(ヨイニク)」の連番が所有のカードにあれば、萬野屋自慢の高級塊牛肉をひとり100グラム(1200円相当)、最大で5名500グラムまで無料でプレゼントしようというもの。なかなか太っ腹ではないか!
とはいえ、一度、頓挫(とんざ)した企画。はたして、くじ実施日となった11月29日の客入りはどうだったのか?
「午後5時のオープン直後から当選番号のあるカードを持参するお客さまが続々と来店され、わずか数時間で用意していた塊肉がなくなってしまいました。おかげで来店客数は通常の3割増し。一度は中止に追い込まれた企画ですが、見事、リベンジできました」(菅野専務)
との言葉だが、「待った」をかけた無粋な内閣官房に恨みなんてない?…と訊(たず)ねると、菅野専務は頷(うなづ)きつつ、
「逆にありがとうと言いたいくらい。というのも、社員にもぼちぼちと総務省からマイナンバーが届いているのですが、その数字に当選番号があるか確かめてもらったところ、まったくありませんでした(苦笑)。『1129』、『4129』の連番って、意外に少ないと気づかされたんです。それでなくても通知カードの配達が遅れ、マイナンバーを手にしていないお客さまが少なくない。もし予定通りにマイナンバーくじを実施していたら当選者が少なくてキャンペーンそのものが不発に終わっていたかもしれません。
事前にストップをかけられた経緯が全国紙に大きく報道されたことで、店の知名度もUPした。しかもマイナンバー以外のカードを利用する今回のキャンペーンを思いつくきっかけまで作ってくれたわけですから。内閣官房のお役人には感謝こそすれ、恨みなんて全くありません。ハイ」
さすが転んでもタダでは起きない大阪商人。まさにあっぱれのマイナンバー便乗商法だ。
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(取材・文/姜誠)