東京電力福島第1原発事故への対応をめぐり、メールマガジンに事実に反する内容の記事を掲載され名誉を毀損(きそん)されたとして、菅直人元首相が当時野党議員だった安倍晋三首相に1100万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が3日、東京地裁であった。永谷典雄裁判長は「記事の重要な部分は真実と認められる」と述べ、菅氏の請求を棄却した。同氏は控訴する方針。
問題となったのは、2011年5月20日付で掲載された「菅総理の海水注入指示はでっち上げ」と題する安倍氏のメルマガの記事。同年3月の事故直後、菅氏がいったん始まった原子炉への海水注入を、「俺は聞いていない」と激怒して中断させたのに、側近は「注入指示は総理の英断」といううそをばらまいたと記載した。実際には、注入は中断されていなかった。
永谷裁判長は、政府や国会の事故調査委員会に対する関係者の証言などから、「菅氏に海水注入を中断させかねない振る舞いがあった」と指摘。記事は野党議員が首相の政治責任を追及したもので、「意見や論評の域を逸脱していない」と判断し、名誉毀損に当たらないと結論付けた。
判決を受け、菅氏は東京都内で記者会見し、「到底承服できるものではない」と述べた。