出勤したら会社倒産してたーー。そんなツイートが投稿され、話題となった。投稿者が月曜日に出社すると、いきなり部長から会社が倒産したことが発表されたそうだ。倒産することは、その前の週に決まっていたという。
「これからどうしよう」という投稿者に対して、多くのアドバイスが寄せられた。「たいへんだけど頑張って」という激励だけでなく、「失業保険金が即座に貰える」「会社都合の退職だから再就職の企業面接時の説明も比較的楽」といった実践的なアドバイスも寄せられていた。
もしも、会社が突然倒産してしまったら、労働者はどうすればいいのだろうか。未払いの給料があったら、どうなるのか。丸島一浩弁護士に聞いた。
●国が立て替えてくれる場合がある「未払いの賃金がある場合、労働者は当然会社に支払いを求める権利があります。それは会社が倒産した場合も同じです。そして、その権利は、取引先への買掛金など他の債権よりも、優先的な立場にあります。
しかし、いくら法的に優先的な立場にあるといっても、会社に支払うだけの資金的余力が残っていなければ、実際問題として支払いを受けることができません」
丸島弁護士はこのように述べる。結局、あきらめるしかないのだろうか。
「そのような場合、労働者は、会社に代わって国から立替払いを受けることができます。
ただし、『即座にもらえる』わけではありません。破産管財人が早期に選任されるなど、スムーズに手続が進んだとしても、手続等の関係上、最短でも受給までに1か月以上はかかるのではないかと思います。
社長が夜逃げした場合など、法的な倒産手続が取られない場合には、労働基準監督署長による『倒産認定』が必要となるため、受給までにさらに期間がかかることもあります。
なお、立替払いを受けるためには、未払い給料の8割相当額であることや、期間制限があることなど、条件や制約がありますので、注意が必要です」
●失業保険はいつからもらえるのか?未払い賃金を支払ってもらえたとしても、その後の収入は途絶えることになる。転職先などを探す期間は、どうやって生活すればいいのだろうか。
「求職活動を行うなど一定の要件を満たせば、いわゆる失業保険をもらうことができます。
ツイートの例では、会社に代理人弁護士が就いていると思われますので、その代理人弁護士に対して『雇用保険被保険者離職票』を請求しましょう。離職票をもらえない場合などは、ハローワークに問い合わせると良いでしょう」
失業した後、すぐにもらえるのだろうか。
「即座にもらえるわけではありません。
退職には、自分の都合で退職した場合(自己都合退職)と、会社の都合で退職することになった場合(会社都合退職)とがあります。
倒産による失業の場合には、会社都合退職ですので、給付制限期間がありません。そのため、自己都合退職の場合よりも早期にもらうことができますが、それでも、手続の関係上、最短でも1か月程度はかかるのではないかと思います。
これに対して、自己都合退職の場合には、給付制限期間があるため、最短でも3か月半はかかります。
また、倒産による失業の場合には、自己都合退職の場合よりも、所定給付日数が手厚くなっています。これらの点で、自己都合退職の場合よりも優遇されているといえます」
丸島弁護士はこのように述べていた。
【取材協力弁護士】
丸島 一浩(まるしま・かずひろ)弁護士
2008年弁護士登録。千葉県弁護士会所属。全国倒産処理弁護士ネットワーク会員。
企業・法人の破産、民事再生、事業再生、私的整理を中心的に取り扱っているほか、中小企業からの相談も取り扱っています。
事務所名:弁護士法人リバーシティ法律事務所