武蔵野大学講師の舞田敏彦氏が、ニューズウィーク日本版に「世界一『チャレンジしない』日本の20代」と題したコラムを寄稿し、ネットで話題となっている。
内容は、日本の若者の中に価値観について聞いたところ「クリエーティブであるのは大切」「冒険や刺激のある生活は大切」と答える人の割合が、世界的に見て極端に低いと指摘するものだ。舞田氏は、この原因が社会的なものであると分析している。
たった1年の「空白」が生涯影響する日本社会「(若者の)冒険志向の低さは、失敗(道草)に寛容ではない日本社会の思想を反映している。(略)履歴書の空白期間をとがめるような社会では、若者の冒険志向は高まらない」
舞田氏は「新卒至上主義の採用」や「新卒一括採用」を具体例に、たった1年間の失敗や空白の影響で、生涯にわたって多大な不利益を被る現状を指摘する。
そして2010~14年の「世界価値観調査」を基に、20代の「クリエーティブ志向」と「冒険志向」が世界的に見て最低レベルであることを分布図で示した。同じ象限にあるのは、中東のイエメンや東欧のアゼルバイジャン、中央アジアのウズベキスタンなどだが、それらの国を引き離して日本は圧倒的に低い。
舞田氏は少子化で若者がますます希少化する中で、その人的資源の力を十分に活用することなしに「日本がイノベーション社会に進化することはできない」と警鐘を鳴らす。ネットではこの記事に対し、問題を若者だけに押し付けない分析に共感する声があがった。
「あぁ、また日本の若者を腐す記事かと思ったら、若者のチャレンジに失敗したときのリスクを大きく仕向けている原因は誰だという話だった」
「企業が欲しいのは反抗しなくて低賃金で長時間労働をする奴隷だからクリエイティブなんていう主体性を持たれたら困るやんけ」
その一方で、「履歴書の空白期間をとがめる」会社があるとの指摘に、信じられないと疑いを持つ人も。しかしシンガポールへの在住経験がある日本人からは、ツイッターでこんな体験談も寄せられている。
日本の対極は「アフリカ諸国」という現実「シンガポールの日系の人材派遣会社に登録しようと思ったら、履歴書を高校時代から今まで、1年の空きもないように埋めてください、そうじゃないと日系企業はいやがりますから・・・といわれました」
空白があってはいけない理由について、会社は「ちゃんとした人なら空白はないはずだから、そこを企業の人は見てる」と告げたそうだ。
OECDの調査によると、日本の失業率は36か国中35番目と低いが、「1年以上仕事のない状態」が続く長期失業者の割合は37.6%で平均を上回る。一度レールを踏み外すと復活しにくい社会であることは、データにも反映されている。
再チャレンジしにくい理由については、農耕社会など歴史的影響も考えられるが、ネットには、そもそも現代の日本は十分豊かなので、わざわざリスクを負って挑戦することの必要性が感じられない、という反論も見られる。
「それは日本が良い国だからでは」「チャレンジしなくてもそこそこの生活ができるローリスクローリターン社会を作り上げているからでしょ」
確かに「クリエーティブ志向」と「冒険志向」で日本の真逆の象限にあるのは、アフリカのナイジェリアやガーナ、南アフリカなど途上国が多く、現状の問題を改善するために挑戦するメリットがかなり大きいと見られる。
こういう国々からすれば、日本は「チャレンジしなくてもハイレベルで豊かに暮らせる最高にいい国」であり、自虐的に反省する必要はないと思われているのかもしれない。
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