『アイドルマスター SideM』のライブイベント「THE IDOLM@STER SideM 1st STAGE~ST@RTING!」が12月6日、舞浜アンフィシアターで開催された。今回は昼の部をレポートする。
同イベントは『アイドルマスター SideM』初の単独フルライブイベント。『SideM』のアイドルは個性豊かなユニットとして活動しており、ユニット「Jupiter」より寺島拓篤(天ヶ瀬冬馬役)、松岡禎丞(御手洗翔太役)、神原大地(伊集院北斗役)、「DRAMATIC STARS」より仲村宗悟(天道輝役)、内田雄馬(桜庭薫役)、八代拓(柏木翼役)、「Beit」より梅原裕一郎(鷹城恭二役)、堀江瞬(ピエール役)、高塚智人(渡辺みのり役)、「High×Joker」より野上翔(伊瀬谷四季役)、千葉翔也(秋山隼人役)、白井悠介(若里春名役)、永塚拓馬(冬美旬役)、渡辺紘(榊夏来役)、「W」より山谷祥生(蒼井享介役)、菊池勇成(蒼井悠介役)、「S.E.M」より伊東健人(硲道夫役)、榎木淳弥(舞田類役)、中島ヨシキ(山下次郎役)が登場した。2011年2月に発売されたXbox 360『アイドルマスター2』にも961プロ所属アイドルとして登場した「Jupiter」の3人は、アイマスフルライブ初参戦となる。
ライブ終盤にはスクリーンに映像出演の315プロダクション代表取締役社長・斎藤孝司がボイス付きで「パッションを感じるぞ!」と登場。声は立木文彦が担当している。さらに『アイドルマスター』シリーズ総合プロデューサーの坂上陽三氏からは、『アイドルマスター SideM』の新アイドル発掘オーディションが一次審査が12月9日よりゲーム内でスタートすることが発表された。それに伴いステージでは、現在ゲーム中ではビジュアルを伏せて履歴書だけが公開されている9人の新アイドル候補のビジュアルを初公開。元警備員の美作武史が二刀流の使い手だったり、元駄菓子屋の安堂鞠王がふわふわした洋菓子のようなビジュアルだったり。元清掃員の葛之葉雨彦は現代の退魔師(ゴーストスイーパー?)を思わせる装い。どうやらいずれも履歴書通りとはいかない個性派揃いの候補者が揃っているようだ。坂上プロデューサーは恒例となった「変態!」コールとオレンジ色のサイリウムでの歓迎に「女性に変態って言われると傷つくね」と苦笑いしていた。
ライブのオープニング、スクリーンには各ユニットのキャラクターと、彼らがアイドルになる前の職業が表示されていく。女性客が多いライブらしく、映像が表示されるたびに黄色い歓声が飛ぶ。だが一番大きな大歓声が上がったのは、最後に「Jupiter」の3人が「元961Production所属アイドル」の肩書と共に表示された時だった。全員がアンフィシアターの円形ステージで入り乱れて楽しそうに歌い踊る「DRIVE A LIVE」からライブがスタートすると、冒頭の挨拶のトリはもちろんフルライブ初参戦の「Jupiter」。寺島は「みんな、お待たせしました!」、神原の「俺たちの始まりの日だね、チャオ!」の挨拶にも深い想いが覗く。最後に挨拶する松岡は、挨拶の前にはもう泣いていた。オープニングなのに泣いてるの? という空気もあったが、松岡にとってここは、いつでもライブできる気構えで5年間待ち望んでいたステージなのだ。
今年の1月に『SideM』のキャストが発表されて以来、リリースイベントや公録などで少しずつ経験を積んできた各ユニットのメンバーたち。元軽音部バンドユニット「High×Joker」は切り込み隊長として「HIGH JUMP NO LIMIT」で会場を最高に盛り上げていく。中でも今日一のテンションを見せたのが千葉で、ダンスで躍動、間奏では騎馬戦の馬を作ったメンバーたちにまたがって気持ちよさそうにエアギターをかきならした。タオル曲として定着しつつある「JOKER×オールマイティ」では、客席から出現した5人がタオルをぶん回しながらステージへ。円形ステージを狭しと駆け巡りながら客席を煽りまくる。野上は「ハイパー楽しー! ことしようぜ」の楽しい、に楽の感情を爆発させるように乗せてくる。白井が「ドーナツ食べて」に合わせて「はむっ」とドーナツを食べる仕草を見せて歓声を浴びたりと、それぞれが個性を出そうとしてきているのを感じた。
元教師ユニット「S.E.M」は「∞ Possibilities」からスタート。EDM調のサウンドに、色とりどりに光る階段ステージとレーザー演出のサイバー感がぴったり来る。ステージでの山下次郎をイメージしておでこ全開でキャラクターに寄せていった中島は「勇気いったんだぜ」と笑っていた。「S.E.M」の切り札的変化球が「Study Equal Magic!」で、普通のアイドルステージとはまったくテイストが違う不可思議なダンスが面白い。「Say ベンキョウ!」なんてコールアンドレスポンスは聞いたことがない。大人の先生たちが、本気でダイナミックに、ちょっと馬鹿なことをやる姿のかっこよさが「S.E.M」の持ち味だ。
元アルバイトユニット「Beit」は、久しぶりに3人が揃っての登場。線の細い少年っぽい役柄の堀江だが、少し引き締まった堂々とした表情で、長身の2人の真ん中に立つ姿がしっくり来るようになった。「想いはETERNITY」も今までで一番バランスの良いパフォーマンスだったように思う。間奏で順番にキメるパートの梅原の彫像のような美しさはちょっと見とれてしまう。「スマイル・エンゲージ」は堀江演じるピエールのイメージが強い曲。梅原と高塚が優しく堀江の肩に手を置いて支え、笑顔をつないでいくようなステージだった。
元サッカー選手の双子ユニット「W」は、「Pleasure Forever…」で大きく手を振り、クラップを呼び込んでいく。初のリリースイベントからわずか3週間で会場の規模は10倍になったが、ステージを包み込むような構成の客席がかなり明るいこともあり、数字以上に一体感が増して感じる。背中を預けあって座る演出から立ち上がる時、菊池が立ち上がる時にちょっとよろけたのだが、すかさず山谷が支えようとした姿に助け合う兄弟感があった。「VICTORY BELIEVER」では2人はエアーの入ったサッカー風ボールを持って登場。客席にボールを蹴りこんだり、間奏で見えないボールをリフティングでパスしあったりと振付にサッカー色を取り込んでいた。
各属性のセンター的ポジションの3人が集まった「DRAMATIC STARS」は、まずは「DRAMATIC NONFICTION」を披露。ステージ奥の階段ステージで、センターに仲村、左右のお立ち台に内田と八代が立って力強いパフォーマンスを見せる。ソロパートに合わせて3人の足元がキャラクターカラーに光ったりと、光の演出も印象に残った。「STARLIGHT CELEBRATE!」が各ユニット2曲目のトップバッターというタイミングなのは、頼れる「Jupiter」が控えていればこそ。熱い笑顔とパワフルさが印象的な仲村が、拳を顔に寄せて見せたキュートな表情にはキュンとした。驚いたのは、ラストの挨拶で仲村が熱い涙を見せたこと。ほとんどのイベントでMCを務めて、『SideM』のステージを支えてきた彼だけに、今日のステージは特別胸に迫るものがあったのだろう。
「Jupiter」のステージは、彼らが役柄に出会って5年目に初めて揃って立つある意味デビューステージだ。ステージ間のショートドラマのコーナーで、寺島や神原が「961プロ」の名前を出したことにも特別な意味を感じる。「Planet scape」では、雲海を抜けた先の星の海を背景に、階段に腰かけた3人が登場。神原のケレン味のある歌い上げや、松岡のキャラクターに入り込んだ少年っぽい歌唱に個性が見える。だが昼の部は寺島の囁くような叫ぶような寺島のソロから伝わってくる痛切な何かと、「Jupiter」のイメージカラーである緑のサイリウムに染まった客席を奥まで見通そうとするような、遠くを見つめる眼差しが一番印象に残った。
締めの挨拶では神原が「本当にJupiterはこの3人で良かったと思いました」と語り、オープニングでは涙を流した松岡も気丈に今日ライブができた喜びと感謝を語っていた。最後はライブTシャツ姿で『SideM』の主題歌的楽曲「DRIVE A LIVE」を全員で歌ってライブは終了。昼の部は全員で手をつないでの「ありがとうございました!」を何回かやったり、「アイマスですよ、アイマス!」をやったりするも、なんとなく締まらない感じ。それも仲村たちがステージや会場のプロデューサーとの時間が好きすぎて、ついついステージに長く残りたがるのが原因のひとつだろうから、これもセンターの人柄故のカラーだろう。ステージに最後に残った寺島が、去り際に仲村と肩を組んで歩いて行ったのが強く印象に残った。
○「THE IDOLM@STER SideM 1st STAGE~ST@RTING!」昼の部 - セットリスト
(中里キリ)