本や地図を上下逆さまに開いている人の姿を、あなたは見かけたことがあるだろうか? 間違いを指摘し、正しい向きを教えてあげた経験がある人もいるかもしれない。しかし、今回紹介する女性にとって、それは大迷惑な話。というのも、彼女には"世界のすべてが上下逆に見えている"からだ!
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■何もかもが"上下逆"の世界
東欧セルビア共和国、ウジツェという街に暮らすボヤナ・ダニロヴィッチさん(30)。両親がボヤナさんの異変に気づいたのは、彼女が文字を覚える年齢に達した時のことだった。正常に文字を認識するためには本を逆さまに構える必要があり、そこで初めて、ボヤナさんが見ている世界が上下逆であることが判明したのだ。両親はなんとか彼女の不思議な視界を正常にしようと四苦八苦したが、何の効果もなかったという。
その後、周囲の理解と協力もあり大学で経済の学位を修得、現在はウジツェの市役所に勤務するボヤナさん。しかし彼女のデスクは、やはり何もかもが上下逆さまだ。コンピュータには画面が上下180度回転して表示される特殊なソフトウェアが組み込まれ、キーボードや電話機、ノートなど、ありとあらゆるものが逆さまに配置されている。家に帰れば、逆さに設置したテレビを見て、スマホも上下逆さまに操作しているという。
■研究者や医師もお手上げ! 原因は脳か!?
前代未聞のボヤナさんの視界だが、これまでにハーバード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者たちが海を越えてはるばる検査にやって来るも、誰ひとりとしてその症状を特定することができなかったという。ただし、彼女の目には何の問題も見られないため、網膜で受けた"像"を視覚として処理する脳に何らかの異常があるものと考えられているようだ。
■逆さまばかりの人生だった!?
ボヤナさんの症状について考えた時、両親は不思議なことをいくつも思い出したという。なんとボヤナさんは、逆子として足から誕生していた。また、初めてハイハイをした時も後退。さらに初めて歩いた時も、後ろへと歩を進めたというのだ。ボヤナさんが正常に歩けるように訓練するため、両親は仕事を休まなければならないほど苦労したという。
■不便なことは運転できないことくらい!
それにしても、目に映る世界がすべて逆さまとは一体どれほど不便なことだろう――かと思いきや、ボヤナさん自身に絶望している様子は見られない。
「信じられないと思うでしょうが、これは私にとって自然なことなのです。生まれたときからこうなのですから。これこそ、私が世界を見る方法なのです」(ボヤナさん)
視界が上下逆さまでもっとも不便なのは、運転免許を取得できないこと程度だという。日常生活に支障がなく、日々健康に暮らしている限り、ボヤナさんの視界も彼女の個性や能力のひとつと考えて良いのかもしれない。彼女には、私たちが普段気づかない物事が見えているかもしれないのだから。
※イメージ画像:「Thinkstock」より