ソフトバンク孫正義氏(左)とニケシュ・アローラ氏(右)(2015年3月期 決算説明会の様子「ソフトバンク HP」より)
内部が大揺れに揺れている。
孫正義社長が自らの「後継者」として、米グーグル元最高事業責任者のニケシュ・アローラ氏を指名したことをめぐって波紋が広がっているのだ。
特にソフトバンク社内では、孫氏を長年支えてきた経営幹部らが一斉に解任されたことについて、急速に不満が高まっている。孫氏にしてみれば、海外戦略を強化するための後継指名だったようだが、その意に反し、孫氏の求心力は一気に低下しているようである。
孫氏がグーグルからスカウトしてきたインド人のアローラ氏は現在、持ち株会社であるソフトバンクグループの取締役会副議長を務めている。6月下旬に開かれる株主総会後の取締役会で代表取締役副社長に昇格し、名実ともに孫氏に次ぐナンバー2に就任するのは報道の通り。
決算会見の席上、孫氏はアローラ氏を「有力な後継候補」と紹介し、「今後はグループの海外戦略を担当させる」と明言した。
一方、グループ人事では、創業当時から孫氏を支えてきた宮内謙代表取締役副社長が取締役に降格し、海外事業を担当してきた後藤芳光氏と藤原和彦氏も、昨年就いたばかりの取締役から外れることになった。業界関係者は、このように指摘する。
「宮内氏はずっと黒子役を務めてきたから、トップになることはないだろうとは思っていたが、まだ若い後藤さんと藤原さんまで持ち株会社から追い出すとは驚くべき人事だ。いかに実力主義とはいえ、あんなドライすぎる人事をやられたら、生え抜き社員はやる気を失ってしまうだろう」
しかも孫氏は、経営幹部を育成するための研修プログラムをまとめ、若手社員に経営トップとしての姿勢を教えてきた。その最中に、海外超大手企業からのスカウティング人事。
「生え抜きを育成すると口では言いながら、外部から幹部をスカウトしてくるのでは、生え抜きが活躍する場の可能性がなくなってしまう」(同)
ソフトバンクは3年前に米通信大手のスプリントを約2兆円で買収するなど、海外事業の強化を急いでいる。最近では海外のインターネット関連企業の買収を積極的に進めており、その事業の中心にグーグルで経験を積んできたアローラ氏を充てる方針とみられる。
そのアローラ氏は、インターネット業界では以前から有名人であり、ハリウッドスターらとの親交も深いという。
会社の成長に向け、有能で派手な人脈を誇る外国人幹部をスカウトしてお披露目した孫氏だが、社内の評判は散々であり、「独善的な運営」(ソフトバンク中堅社員)との批判も出ている。
(文=編集部)