●北瀬佳範氏と野村哲也氏に訊く『ファイナルファンタジーVII リメイク』
ソニー・コンピュータエンタテインメントアメリカは、現地時間2015年12月5日、6日の2日間、アメリカ・サンフランシスコでプレイステーションの祭典“PlayStation Experience 2015”を開催。5日のKeynote(発表会)にて、スクウェア・エニックスのプレイステーション4用ソフト『ファイナルファンタジーVII リメイク』(以下、『FFVII リメイク』)の最新PVが発表されたのは既報の通りだ。
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そのKeynoteでの登壇を終えたプロデューサーの北瀬佳範氏と、ディレクターの野村哲也氏に、出国までのわずかな時間を割いていただきインタビューを実施した。上記関連記事のリリースの通り、本作は1作では完結せず、分作の形を取る。その理由や制作体制、バトルについてなど、必見の内容なのでぜひご一読を。合わせて、会場の模様を撮影した動画も公開するので、現地の雰囲気も感じ取っていただけるはずだ。
なお、本インタビューは簡易版となっている。追加取材分を加えたインタビュー完全版は、週刊ファミ通2015年12月17日発売号に掲載予定。8ページの特集を組んでいるのでお楽しみに!
■ストレートなタイトルと分作の理由
――Keynoteの手応えは、いかがでしたか? 会場は相当に盛り上がっていましたね。
北瀬 不安ではあったんですが、PVが流れているときに裏で待機していたら、バレットの登場で歓声が聞こえ、障害物をくぐっているゲームシーンやバトルなどでも、会場にいる方の大きな盛り上がりを感じて。そういうリアクションをいただけて、ほっとしています。
――野村さんも登壇されました。サードパーティーの中でトップバッターということもあって、緊張されたのでは?
野村 じつは、登壇順を知らされたのは当日、会場入りしてからだったんです(苦笑)。直前にコメントを差し替える必要が出てきたりもして、非常にハラハラしながら登壇したのですが、映像に大きな反響をいただけてよかったなと。
――そんな舞台裏があったとは……! 本作発表時の野村さんへのインタビューでは、橋本(真司)さんと話したうえで、北瀬さんがリメイクへの着手を決めた、とうかがいましたが、北瀬さんはなぜこのタイミングで“覚悟を決めた”のでしょうか。
北瀬 これまで長いあいだ「リメイクはまだか」とたくさんの方々からご期待いただき、その思いは感じていました。そんな折、『FF』25周年のイベントでシリーズを改めて振り返り、同時にこれからのことも考える機会があって、そのときから「『FFVII』をリメイクするならいましかないのでは」と考えるようになったんです。『FFVII』のリメイクは、私が生きているうちにやっておきたかったことで、それは橋本も同じでした。
野村 橋本は本気か冗談か、「もう定年だから」と、それまでに手掛けたい旨をくり返し言っていたので、根負けした部分もあるかもしれません(笑)。
――いろいろなタイミングが合わさっていたのですね。タイトルは『FFVII リメイク』に決定されたとのこと。かなり直球で、サブタイトルなどがつかないのが意外でした。
北瀬 “リメイク”のほかに、ストーリー系に寄ったサブタイトルを付ける案もあったのですが……。
野村 サブタイトルを付けると、外伝や続編のような印象になるので、それは避けたいというのがありました。
北瀬 今日のKeynoteの発表時、冒頭の映像に、ティザー映像を観た方のリアクションを撮った動画が使われていましたよね。彼らは最初は半信半疑なんですが、“REMAKE”と出たところで、「外伝ではなく、『FFVII』が帰ってくるんだ」と確信して、すごく興奮してくれています。サブタイトルが出ていたら、そうはいかなかったでしょう。そのため、正式タイトルとしても、“リメイク”という言葉の持つわかりやすさを取りました。
――なるほど。そして……今回は、1作で終わらず、分作にされるとか。
北瀬 はい。そもそも、これまでリメイクをしなかった理由に、『FFVII』をいまの技術で正面から作り直すのは相当にたいへんで、踏み切れなかったというのが少なからずありました。きちんと『FFVII』の“密度感”を保ったまま、HDでリメイクすると、とうてい1作では収まらないボリュームになります。
野'村 1作に収めようとするなら、いろいろなところをカットして、『FFVII』のダイジェストにするしかありません。それではやる意味がないし、たとえば今回はオリジナル版では行けなかった、ミッドガルのさまざまな場所を探索できたりするのですが、やるからにはそういったことまで入れ込んで濃密に描き切りたい。もちろん、さまざまな理由でオリジナル版からカットする部分もあるでしょうが、そうした今作ならではの描写の追加をしていき、かつこのディテールの作りだと、結局は全体的なボリュームも増える見込みです。皆さん、スケジュールも心配でしょうし、自分たちも早く遊んでいただきたい。その線引きのためでもあります。
――そこまで凝っているがゆえの分作なのですね。現在、北瀬さん、野村さん、野島(一成)さん、そして橋本さんのお名前が出ていますが、ほかにはどのような方々が参加していて、制作はどういった体制で行っているのでしょうか。
北瀬 モデルについては、たとえば弊社ヴィジュアルワークスのディレクターが監修していたり、データに手を入れたりということをやっています。
野村 デザインは、今回公開となったビッグスたち3人など、サブキャラクターを中心に手掛けているフェラーリ(・ロベルト氏)がいるほか、プログラマー、企画等のコアメンバーが、外部の協力会社さんと密に進めて行く感じです。
北瀬 そうしたコアメンバーが集結して監修すると同時に、現在では当たり前の制作手法となっていますが、複数の制作会社さんにもご協力いただいています。『FFVII Gバイク』でお世話になったサイバーコネクトツー(以下、CC2)さんも、そのうちの1社になります。
――CC2!
北瀬 CC2さんはアクションゲームの経験が豊富でノウハウをお持ちですし、映像演出のセンスに光るものがあると感じていました。ただ、演出のテイストが微妙に弊社の作品とは違っている部分があったので密にやり取りをして。今回のPVについても哲(野村哲也氏のこと)がうるさく言って(笑)、弊社のスタイルに近づけていただきました。
■最新PVの内容から見えてくるもの
――PVでは、背景などはもちろん、キャラクターも相当にリアル寄りになっているのが新鮮でした。
野村 キャラクターは、リアルにして実在の人間に近づけすぎると誰だかわからなくなってしまうので、ギリギリのリアルさを目指しています。
――『FFVII アドベントチルドレン』のモデルは使用されていないんですよね。
野村 あのモデルは10年以上前のものなので、技術的に古すぎますし、いま見るとデフォルメされすぎているんですよ。今回のビジュアルは、目や鼻、髪などの細部にいたるまで、リアルとデフォルメのバランスを何度も何度も調整し、ようやくたどり着いたものになります。
――確認になりますが、今回公開されたPVは、挟み込まれているティザー映像のシーン以外、新規部分はすべてプリレンダではなく実機ですか?
北瀬 そうです。PVにある、電車から降り立ったクラウドのアップのシーンからカメラが背中に回り込んで、そのままゲームプレイに突入します。
野村 とはいえ、クオリティー的にはまだブラッシュアップしていくので、まだまだこんなものではありません。
――クラウドは、肌の透明感や瞳の虹彩の描き込みなどに、生々しさと同時に怖ささえ感じます。少し痩せた印象もありますが。
野村 ライティングのせいでしょうね。肌が白いのも痩せて見える要因だと思います。野島さんは、「病的な感じがすごくいい」と言っていました。
――ああ、なるほど、それで。序盤のクラウドは言ってみれば“ふつう”ではないですからね。で、このクオリティーで女装……します?(笑)
野村 女装はシナリオに組み込まれていますよ(笑)。デザインはまだですが。
――期待が膨らみます! そのクラウドより、ガラッと印象の変わったバレットのデザイン変更については、どんな経緯があったのでしょうか。
北瀬 最初は『FFVII アドベントチルドレン』のビジュアルでいくつもりだったので、CGデータも流用できてけっこう早くできるんじゃないかな、と思っていたところに、哲が「バレットを描き直す」と言ってきて「えっ!」っとなったのを覚えています(笑)。
野村 初期からパーティーメンバーは全員リニューアルしたいと言っていたんです。バレットは、リアルになったらこんな感じですよ(笑)。当時のイラストと比べてもらうと、パーツのイメージは崩さずリアルになっているのがわかると思います。
――フィールド移動やバトルはシームレスに展開するようですが、バトルはコマンド表示からすると『キングダム ハーツ』(以下、『KH』)系のアクションですか? それとも『クライシス コア -FFVII-』の発展形ですか?
野村 何かと言われればアクションです。『クライシス コア』とは全然違いますね。アーケード版『ディシディアFF』や『KH』シリーズほどアクションの色は強くはないですが、そちら寄りです。
――ATBではない?
野村 それが、ATBはあるんですよね。ただ、ATBゲージが溜まったら順番に攻撃するというものではなく、『FFVII リメイク』ならではのアクション性につながるシステムになっています。
北瀬 いままでのATBとは違うシステムを内包しているというか。名称もATBといまは言っていますが、正式には変わるかもしれません。
野村 詳細は言えませんが、ATBゲージが赤くなることがある……という点に注目です。
――クラウド以外のキャラクターの操作はどうなるのでしょうか。
野村 3人のパーティーメンバーを自由に切り換えて戦えます。ただ、切り換えなくても問題はなく、ずっとひとりのキャラクターを操作することもできます。
――アクションになり、システムも刷新されていて、なかなか忙しいバトルになりそうですね。
野村 バトルのテンポ感は、アーケード版『ディシディアFF』くらいにしたいですね。今回お見せしているのはあくまでベースの部分にはなりますが、キャラの切り換えが可能な中で、戦略性もあり、ただ敵を漫然と叩くだけのアクションにならないよう、独自の仕組みを考えています。そうしたバトルを形にするべく、『ディシディア』シリーズと『KH』シリーズを両方経験している者をチームに召喚したところです。
――野村さんのイメージするバトルを早く触ってみたいです!
北瀬 もう哲の1000本ノックがすごくて。思い描くビジョンに近づけるために、いっさい妥協をしないので、制作現場とのやり取りを幾度となくくり返しているんです。こういうのは久々で、私も楽しくなってきました(笑)。制作としては、今回のPVのクオリティーをスタート地点と捉えていて、ようやくリメイクとしての方向性を確認できたように思います。これから磨いていきますので、どうぞご期待ください。
野村 今回の映像は、自分としてはくり返し観すぎていて麻痺してしまい「本当にこれでいいのか」とわからなくなることもあったのですが、今日いただいた歓声で方向性として間違っていないことを確信できて、とりあえずは安心して制作を続けられそうです。遊び込める凝った作品をお届けするために、クオリティーを向上させていきたいと思います。
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