北海道小樽市で昨年7月、飲酒運転で海水浴帰りの女性4人を死傷させ逃走したとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)などの罪に問われた元飲食店従業員海津雅英被告(32)の控訴審第1回公判が8日、札幌高裁であり、即日結審した。高橋徹裁判長は求刑通り懲役22年とした一審札幌地裁の裁判員裁判判決を支持し、被告側の控訴を棄却した。
高橋裁判長は「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態だったとする一審判決に不合理な点はない」などと指摘し、一審同様、危険運転致死傷罪の成立を認めた。被告が大量に飲酒した後、車を運転してひき逃げをしたことについて、「身勝手かつ卑劣な行為というほかない」などと厳しく非難した。
被告側は「事故の原因はスマートフォンを見ながら運転したことで、アルコールの影響でない」と主張し、法定刑の軽い過失運転致死傷罪の適用を求めていた。
判決によると、海津被告は昨年7月13日午後4時半ごろ、運転前の飲酒で前方注視が困難な状態で車を運転し、海水浴帰りの女性4人をはねて原野沙耶佳さん=当時(29)=ら3人を死亡させ、1人に重傷を負わせて逃走した。事故後、被告の呼気から酒気帯び運転の基準値(呼気1リットル当たり0.15ミリグラム)を超えるアルコールが検知された。
札幌地検は過失運転致死傷罪と道交法違反(ひき逃げなど)罪で起訴したが、遺族が危険運転致死傷罪に訴因変更するよう求める7万人分を超える署名を同地検に提出。地検は危険運転致死傷罪への訴因変更を地裁に請求し、認められた。
閉廷後、原野さんの父和則さん(63)は控訴棄却になったことに安堵(あんど)の表情を見せ、「(被告は)これ以上われわれを苦しめないでほしい」と話し、上告しないよう求めた。
札幌高検の矢野元博次席検事は「一審に引き続き、検察の主張・立証に裁判官の理解をいただけた」とコメントした。海津被告の弁護人は、被告と相談し上告するか検討するとしている。