風邪を引いてのどが痛い、大声を出してイガイガとするとき、食事やドリンクを飲み込むのがつらくなる前に早く治したいと切望します。でも、ドラッグストアにずらりと並ぶのどの薬を見ては毎回、どれを選べばいいのか迷います。そこで、大阪府薬剤師会理事で薬剤師の近藤直緒美さんに、のどの薬の選び方を聞いてみました。
■原因は、「細菌やウイルス」か「のどの酷使」なのか
近藤さんはまず、「のどの痛みの原因を探るように」と話します。
「風邪やインフルエンザなどの細菌やウイルスによって扁桃(へんとう)炎や咽頭(いんとう)炎などを起こしている場合と、大声を出したなどでのどを酷使したことによる炎症の場合があります。どちらも炎症ですが、それぞれに応じた対処法を取る必要があります。
例えば、即効性が期待できるのは、炎症があるのどに直接働きかけるスプレータイプです。主に3種類の成分があります。
(1)ポピドンヨード
殺菌消毒成分が強く、細菌やウイルスに働きかける。
(2)セチルピリジニウム
増殖した細菌を殺し、痛みや腫れを抑える。
(3)アズレン
のどの粘膜の荒れや腫れを抑えて、炎症や痛みを和らげる。
(1)と、(2)や(3)では働きが異なります。(1)は、細菌やウイルスが原因の炎症を改善しますが、大声を出してのどを酷使したときにはかえって刺激になり効果がありません。
(2)と(3)は、のどの酷使による痛みや腫れを鎮めたいときに使用します」
ほかに、錠剤や顆粒剤がありますが、違いや選び方のコツはありますか。
「形状の違いですから、成分が同じなら、好みのタイプを選べばよいでしょう。例えば、錠剤タイプのトローチは常時携帯することができる、というメリットがあります。和らげたい症状や1日に飲む回数、飲みやすさなどを総合して選んでください。
また、のどの粘膜は乾燥すると、侵入した外敵を追い出す力が弱まり、細菌やウイルスに感染しやすくなります。のどの薬を試すとともに、のどを乾燥から守るために、『加湿器やマスク、濡れタオルで湿度を調整する』、『こまめにうがいをする』ようにしてください。
特にうがいは、のどの粘膜に潤いを与えるとともに、のどの粘膜についた細菌やウイルスを洗い流します。水でうがいをするだけで、大半のウイルスは洗い流されると言われています。
風邪でものどの酷使でも、炎症を起こしている場合は、うがい薬を使ってのうがいをお勧めします。うがい薬にも、先に紹介したスプレータイプと同じ3種類があるので、原因に応じて使い分けましょう」(近藤さん)
■のどが痛いときは医薬品、乾燥対策には医薬部外品ののど飴を選ぶ
また、のど飴の選び方についても近藤さんは、こうアドバイスをします。
「のど飴には、『医薬品』、『医薬部外品』、『食品』の3種類があります。
『医薬品』とは、予防や治療を目的とした薬のことで、含有成分の効能・効果が認められています。医薬品の販売が認められている薬局やドラッグストアなどでしか購入できません。
『医薬部外品』は、厚生労働省が許可した効果・効能に有効な成分が、一定の濃度で配合されています。医薬品に比べて、効き目が穏やかで副作用が少ないのが特徴です。
『食品』は全ての飲食物に当てはまり、お菓子の飴と同じ扱いなので、医学的な効果・効能は認められていません。
つらい症状の際には医薬品を、のどに潤いを与えて乾燥を防ぐ、スーッとしたいときなどには医薬部外品や食品ののど飴をお勧めします。
のど飴を選ぶときでも、迷った場合は遠慮なく、ドラッグストアやかかりつけ調剤薬局の薬剤師に相談してください」
風邪でのどが痛いときは、ポピドンヨードを含む「のどスプレー」が最も効果があり、また、のどを酷使したときには、刺激の少ない成分のアズレンを含むスプレーやうがい薬、飴などから好みで選べばいいということです。それぞれの薬の成分や違いに注目し、症状に合わせた薬を選ぶようにしましょう。
(岩田なつき/ユンブル)
取材協力・監修 近藤直緒美氏。薬剤師。大阪府薬剤師会理事。なのはな薬局本店、真上(まかみ)店(ともに大阪府高槻市)を運営する有限会社スターシップ代表取締役。