ほくろのような皮膚の黒い部分が直径20センチ以上も大きくなる「先天性巨大色素性母斑(ぼはん)」について、関西医科大と国立循環器病研究センター、京都大、大阪工業大は10日、患者の母斑組織を切除して高圧処理し、細胞を死滅させてから元の部位に移植する世界初の再生治療を行うと発表した。
日本医療研究開発機構の支援を受けた臨床研究で、来年1月から再生治療を希望する患者を募集する。5人以上の患者について計10カ所の部位で治療を行うのが目標。
先天性巨大色素性母斑は放置すると皮膚がんの悪性黒色腫が生じる危険がある。切除が望ましいが、母斑が大き過ぎる場合は患者自身の別の部位から皮膚を採取して移植することができず、手術が困難だった。
研究責任者の森本尚樹講師(形成外科学)は「臨床研究が成功すれば、将来は皮膚の悪性腫瘍や乳がんなどへの応用も目指したい」と話している。
皮膚は表皮の下に神経や血管、毛の根元を含む真皮(厚さ1〜3ミリ)がある。真皮に含まれる母斑細胞だけを死滅させる方法がないため、森本講師や同センターの山岡哲二生体医工学部長らは食品加工技術を応用。切除した母斑組織を10センチ角程度に分けて10分間、2000気圧の高圧で処理し、全ての細胞をいったん死滅させる方法を開発した。
細胞以外のたんぱく質やコラーゲンはダメージを受けないため、元の部位に移植して戻すと、死んだ細胞は自然に分解され、新たに正常な細胞が皮下組織から移動してきて定着する。これまでにミニブタの動物実験に成功した。